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出会い
彼女の存在は、少しだけ有名だった。
でも、その頃は同じクラスでもなかったし、どうでもよかった。
噂ではクラスに行けなくなって引きこもったとか、グレたとか、実は学校に来てるとか。
とりあえず、教室には居ないという事は知っていた。顔も知らない彼女の事を。
でも、そんな彼女を初めて会ったとき
不思議と、恋の足が久々に動いた。
それは罠でもなんでもなかったはずなのに、不思議と知りたくなってしまった。
「え、居たのか!?」
「うん、多分だけど。」
そう、顔は見たことなかったんだ。彼女の名前しか知らなかった。
同じクラスだがこのクラスには一回も来ていない。
偶然、廊下ですれ違ったんだ。友人と笑いながら歩いていた。
隣に居たのは去年までイジメを受けていた女子だった。
「別人じゃね?」
「春日野なんて苗字、居ないだろ他に。」
春日野美羽。
引きこもり説が流れている彼女が学校に来ているなんて、と友人の幸樹は言う。
でも、幽霊じゃないだろうし、本当はちゃんと来てるんじゃないかなぁ・・・。
「じゃあなんでクラスには来れないんだろうな。」
「そ、それは多分何か・・・ほら、事情が。」
ふうん、と言って幸樹は少し周りを見回して
「で?どうだったよ。」と聞いてきた。
「・・・何が?」
「容姿だよ!どうだった?ブスだった?やっぱり。」
「・・・まあまあ?可愛いとは言えないけどブスじゃないって感じ。」
「髪型とか体系は?ほら・・・胸とか?」
呆れた。コイツには本当に。
「髪型はロングで二つ。かなり長かったな。胸はそこまでじゃない。太ってはいない。他には?」
「いやもっと詳しくだよ!」
それを聞いてどうするんだか・・・。
「目はちょっと釣り目で、笑い顔がちょっと似合わない。」
「そうか、なら俺のタイプじゃないな。」
なるほど、コイツ、自分のタイプだったら死ぬ気で探すつもりだったな。
2年になって初めて、春日野と同じクラスになった。
春日野は小学校は別だったし、1年は噂でしか聞いてないし。
「・・・何処に居るんだろうなぁ。」
「春日野に惚れた?亮介。」
「は、はあ!?違うし!全然違うし!!一目ぼれとかしない主義だし!」
慌てて全力否定してしまったが、間違いじゃないし、こんなに必死だと逆に怪しいだろ。
「亮介、お前、ちょっと手合わせてみ。」
「は、はあ?」
「いいからやってみろって。」
言われたとおり手を合わせてみた。
「やっぱり惚れたな。」
「あ?何が?」
「お前さ、前のほら、なんだっけ。前の彼女の名前。」
「真央。」
「そうそう、その子に惚れた時だけ、そんな手の合わせ方してたよな。指だけ合わせる付け方。」
俺は必死に、思い出そうとした。確かにそうだ。惚れてからずっと少しの汗さえ嫌になって、自分の微量の手汗を避けるためにそうやって・・・。
「おっ?ビンゴ?ビンゴ?一目ぼれっすかぁ?亮介さーん!」
笑いながら肩をばしばしと叩いてくる。
「別に・・・。」
「でもよ、アイツはやめておいたほうがいいと思うぜ。」
「なんで。」
「噂なんだがよ、どうやら昔からよく誰かを傷つけていたって。凄い天然っぽいのに、かなり鋭くしかも真実しか告げない。」
どうせ噂だろ?そう言おうと口を開こうとした瞬間。
「しかも、被害者が居るんだ。」
「・・・え?」
まさか、そんな、あんな優しくて儚さそうな子が、そんな事するわけない。
「まあ、転校して東京行ったらしいからな。それも真実かどうかは。」
「嘘だろ、どうせ。」
馬鹿馬鹿しい。どうせあの子に嫉妬とかしている女が流してる噂だろ。全く、居なくなった子を好き勝手に・・・。
そんな事を思いながら、また会える機会を楽しみにしていた。
本性なんて誰も知らなかったのに
どうして俺はあそこまで思っていられたんだろうか。