お出かけ
「どうかした?」
カレに声を掛けられ、ワタシは、唇からカップを離した。
「ううん、なんでもないよ」
「可笑しいよ…クッキーに手が伸びてない。雪でも降るかもしれないな」
『ティータイムのおまけ』と、飲み物につけてくれたマーブルのクッキーが、まだ小袋にはいったまま テーブルの上にあった。カレのほうのナッツの小袋は、既に空だった。
ワタシは、小袋の上から 半分に割ると 半分を取り出しその片割れをカレに差し出した。
「どうぞ」
「ははは。さすがに 此処では『あーん』はできないね」
「できるよ。して欲しい?」
「いや、ご遠慮していいかな。ははは」
カレは、小袋に指を突っ込んで クッキーを摘んで食べた。
「あ、これ旨い。ねえ、やっぱりあとで オレンジ買って帰ろうか?」
「今日は、此処で美味しいの 飲んでいるから要らないよ」
「そうか。じゃあキミが飲みたいって頃に 買っておくよ」
ワタシは、カレから 窓の外に視線を移した。
「クッキー食べずに このまま雪が降っても 良かったかなぁ」
「え? 降るかな?」
カレも 窓のほうを向いた。ワタシは、その横顔を見ながらあの日を思い出した。