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好き好き大好き

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「俺、カノジョいるから」
 告白は玉砕。
 でも勝負はここからよ。
 知っていたわ、あなたに彼女がいるなんてこと。
 毎日毎日、仲良く手をつなぐ女の子が彼女以外の何だというの?
「あなたの心、絶対に射止めてみせる」
 あなたに恋をした一年前にそう誓ったの。
 始まりがなんだか、知ってるかしら?
 私の教室に来ていたあなたの笑い声に思わず振り向いて、そしてその笑顔にやられたのよ。
 そう、一目惚れだった。
 あなたの全てを好きになったわ。
 無邪気な笑顔も、とろけるような声も、くせっ毛の髪も、幼く見える顔も、いつも深爪の手も。
 もっと挙げた方がいいかしら?
 授業の間の眠たそうな表情、隠れ二重の目、耳たぶの長い耳、よく日に焼けた腕に足。
 校庭でボールを追いかけるあなたがかわいくて愛おしくて。

 私があなたに溺れているのと同じくらい、あなたも私に夢中になるようにしてみせる。
 そう誓ったこの想いは、いつまでも色あせないの。

「一緒に帰ろうぜ」
「うんっ」
 あらあら、仲むつまじくお帰りかしら?
 昨日は喧嘩していたのに、案外早い仲直りだったのね。
 あなたって本当に物好きだと思うわ。
 だってそうでしょう?
 あんな女、あなたのことを少しも理解していないのに付き合っているなんて。
 ほら、あなたのリュックで揺れるそのストラップ。彼女からプレゼントされたペアルックよね。あなたには似合わないシロモノじゃない。
 そんなにあなたを分かってない女、あなたの傍で笑う権利なんてないわ!
「私が、あなたの傍に……」
 あなたのこと、たっぷりと甘やかしてあげる。
「気持ち悪いんだよ、近づいてくんな!」
 全く、素直じゃないんだから。
 その頑なな心、少しずつ丹念にほどかなくちゃね。そして綺麗に結び直すの。いいでしょう?
 そのついでに見つけてあげましょうか? 私につながる、あなたの赤い糸。

「もう私たちに関わらないでほしいの」
 あらあら、かわいらしいカノジョさん。
 どうしたのかしら、そんなにこっちをにらんじゃって。
 でもね、私はあなたたちに関わっているつもりはないの。
 私の眼中にあなたはいないのよ?

「あの子には関わらない方がいいって」
 教室の隅でこそこそ話。
 奇遇ね、私もあなたたちに関わっていたくないわ。
 面倒な馴れ合いなんてこっちから願い下げよ。
 私に必要なのは一人だけ。
 ああ、そんなあなたから呼び出されたの。
 内容なんて何でも構わない、どうやってこのチャンスを利用しようかしら?
「俺のカノジョに近付くな」
 怒りに染まったまなざし。その中にあるのは侮蔑。
 いつもよりワントーン以上低い声で脅しつけるように言葉を吐き出した。
「もう俺にもあいつにも近付くんじゃねぇ」
 ああ、愛おしい。
 あなたからこんなに純粋な感情をもらえるなんて、まるで夢みたい。
 でも、これだけじゃ満足できないわ。
 純粋な思いは私だけに向けてほしいの。
 だから、大事な大事なカノジョさん。

 消えてちょうだい?
作品名:好き好き大好き 作家名:風歌