罪人少女の形式懺悔
初めて恋をしたのは小学校の頃だったと記憶している。私の前の席になった彼女。彼女は私の前の席に座っていて、振り返って「よろしくね」って言ったんだ。それがあまりにも素敵な笑顔だったから私は恋をしてしまったんだ。そう、それが最初だったと思う。彼女は私の学校に来る理由になった。
彼女との恋がどうなったかと言えば、もちろん悲しい思い出になった。異性愛が横行するこの世界で同性愛なんて叶うはずがなかったのだ。彼女は私のことを単純にクラスメイトだとしか思っていなくて、私の恋情なんて受け入れる場所がどこにもなかったのだ。悲しみに暮れる私であったけれど、悲しんでいようと同情してくれる人はどこにもいない。同性を好きになった時点で私は罪人になった。世界は罪人に優しくないのだ。一度罪を犯してしまったら最後、私たちはもうそれ以前の世界になど戻ることができない。私は小学生にして罪人になってしまった。どうしようもない。私は罪人だ。
だから私は恋をしないようにしようと決めた。それが罪人である私の正しい在り方なのだと言い聞かせて、彼女への思いを封印して、恋をするという感情を封印して、私は恋のできない人間になった。
恋をしないようにしようと決意したにもかかわらず、私は相変わらず罪人だった。好きな人を作らないということが、この少子化が進む世界では罪だったのだ。私はまた罪人になってしまった。種の保存に貢献できない私は恋をしようとしなかろうと罪人に違いなかったのだ。これは誤算だった。そこまで考え付かなかったのだ。私は愚かだった。愚かな少女だった。
だけどそこまでの分別を私に期待しないでほしい。だって私は少女だったのだから。。少女というものは世界をそこまで知らない。甘く甘美な存在であり、世界のケガレなど知らずに、されど人救いの毒をもって存在するのが少女なのだから。私は世界を知らない少女だったのだ。たとえ罪人だったとしても。
そんな私は罪人として生きてきた。そして、今日また私はさらに罪を増やすのだ。月明かりに誘われてやってきた公園。そこには美しい少女。黒髪が長い、大きな目が輝いている少女。歳は私より少し若いくらい。そんな少女が月明かりに照らされてそっと佇んでいたのだ。私は彼女に心を奪われた。封印していた恋心は再び私の意識の表層へとやってくる。
すべては月が悪い。そして地球が悪い。月という存在の近くにいる地球が悪い。おかげで私はまた罪を重ねてしまうのだから。私は罪を重ねる。そうやって生きていく。私は罪人なのだ。すべては地球という惑星が悪いことにする。私を生んでしまったのは地球だと思っておく。