人生いろいろ
20才・大学生のターン
…今、このアホは何と言った?
目の前にいる男を凝視したまま軽く固まる。
いくらくらい?いくらって……、ああ!あのプチプチしたオレンジの!
…ってボケてる場合か俺!!
「……バイクの相場なんぞ知らん!」
そう、『俺のバイクいくら位で売れると思う?』と言いたかったんだろう、こいつは。
アホだから日本語が不自由なんだ。
さっき自分が『単車を売れ』と言った事を思い出し納得する。
「ちげーよ馬鹿っ、単車じゃなくて俺だよ俺!俺を売んだよ馬鹿っ」
………アホに馬鹿と言われてしまった。
しかも二度も…。
いや、そんな事よりもっとタイヘンな事言われたような…
何故か得意げな健児に一抹の不安を感じながら手招きする。
「とにかく上がれ…」
「だからな?バイクは売っちまったらハイ終わり、だろ?」
「その点!俺なら何回でも売れる!だろ?」
「ちょーオトクくねぇ!?」
「しかも俺は世界に一人しかいないから、希少価値だよな!」
なにやらアホが力説している。
お前みたいなアホ買う奴がいるかよ。
現実は教えといてやらんとな。
世の中そんなに甘くないってことも!
「お前なんぞ一銭にも」
「なぁ、いくら出す?」
……………はい?
「まぁ、お隣さんだし後輩だし?まけてやんねーこともないけど、希少価値の俺様の“お初”だからな、いくら出す?」
なんか話が見えなくなってねーか?
「なんでアンタ売る話しが、俺が買う話しになんだよ」
「俺がお前にしか売らねーから」
…………なんですと!?