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僕で或り続ける為に

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第三話



昼頃、元から小さい胃だったが此処に来てからは随分小さくなったと思う。
何せ朝お茶二杯も飲めば夜まで持つ。

いや、運動も何もしていないから当然っちゃ当然なのだろうが。

我ながら胃袋に苦笑し、蝉の泣き声と風鈴の音を聞きながら窓辺を見つめる。
カーテンで締め切っているものの暑く明るい日光は部屋中を照らし、電気を点けなくても十分明るい。

長年家に居て、ずっと引き篭り状態の為己の肌は真っ白と言える。
おまけに体系は細く身長は母親譲りで160ぐらいだろう。
…いや、正確には158,3。

茶色い髪はふわふわの猫っ毛で瞳は大きいらしい。
華奢すぎる身体は御主人様の性欲を乱すらしい。

ならばこんな顔、こんな身体、捨ててしまおうか。
何て考えても実際出来ないのだけれど。

カーテンを開け庭を見つめる。
大きな豪邸の庭はとてつもなく広い。

世界共通。

退屈凌ぎにと買ってくれた本は全て読み。
ならばと勉強道具を買ってくれたが難なく回答。
やる事も無く只、御主人様の帰りを待つのみ。

せめて犬か猫でもいたらな――――。

何て考る。
しかしそれが無理だと分かりきっているものの、希望を捨てる事が出来ないでいた。

「…あっ…」

庭の向こう、道路側には学校を抜け出したのだろう学生が溜まっていた。
煙草を銜え壁に体重を預けながら友達と楽しく喋っている。

いいな。

そう思わずにいられなかった。
笑える相手が居て、親も居て、何しろご奉仕、何てしなくていい。
ちゃんと学校に行けて喧嘩も出来る。

そんな暮らしに何度か夢見た事があった。
決して今の暮らしが不満だとか嫌だとかそういうのじゃない。

寧ろ、今の゛普通゛の学生から見たら羨ましいのだろう。
が、しかし己にとってはその゛普通゛が羨ましいのだ。

じっと見つめながら時が過ぎるのを待つ。
己は人の視線に気付かない。
誰かが一時間以上己を見ていても気付かないくらいだ。

だから毎日毎日窓から身を乗り出して普通の暮らしを見ている度に
ある人も毎日毎日、己が外を見る度にこちらを見ている視線に気付かなかったんだ。

作品名:僕で或り続ける為に 作家名:赤夜