僕で或り続ける為に
第六話
「さて、陽(ハル)も色々聞きたい事があるだろう?
君の気が済むまで答えるよ」
「…ハルって俺の事ですか?」
「そう。可愛いあだ名だろう?」
「…貴方は何故俺を引き取ったんです?
何故俺が此処に居たと知ったんです?
俺はこれから…どうすればいいんですか?」
「1、君が可愛くて美しくて、あそこに幽閉されるのは勿体無いと思ったからねぇ。
君の願いも聞きたかったし。
2、君が毎日学生達を見ているのを知っていたからね。
君同様、俺も君を毎日見ていたんだよ。
3、君が望むなら俺が君の保護者になってあげよう」
信じがたい話だった。
本来、己は゛奴隷゛としてあの家に連れてこられたのだ。
誰からも人間と認められない奴隷として。
だが、あの家はそんな奴隷にも関わらず個室まで用意してくれた。
どの奴隷の中でも一番己がよかっただろうと胸を張って言える。
奴隷の扱いと言えば野良犬、野良猫以下の扱いだった。
御主人様が苛々したら殴られ、食事は与えられず(つまり自分が取ってくる)
寝る場所は外。
奴隷の中ではそれが゛普通゛。
なのに、あの家もこの人もその犬猫以下の奴隷の保護者になると言ってくれた。
どういう風の吹き回しか知らないが簡単に信じられる筈もなく。
怪訝な目を向ける事しか出来ずに居た。
「信じろ、何て言わないよ。
君達の中ではこんな扱い、珍しいんだろう?
運がよかった、そう思えば良いじゃないか。
それと学校に行きたがっていたね。
全寮制かそれとも普通の学校か。
どっちがいい?」
行かない、という選択肢は与えられないみたいだ。
短期間だがこの人に何を言っても聞いてもらえないだろうと分かり、少し苦笑した。
本来ならば此処でこの人の望む事をして、団欒して絆を深めていくのだろうが
゛全寮制゛に興味が引かれる。
インターネットで見た事あるがとても楽しそうな所だったので一時期、頼もうか本気で悩んだくらいだ。
「……寮が、いいです…」
「お安い御用さ。
すぐに手配してもらうから、君は自室で待っているといい。
今日は疲れるからね、今ゆっくり寝るといい」
頭を撫でられ不思議と瞼は重くなってきた。
赤城の太ももに頭を置いて寝た、何て知らずに安心して意識を手放した。