折れた翼と大きな樹
翼を広げて羽ばたこうとすると何やら痛そうで、飛ぶ事は出来ないよう。
「どうしたんだい?」大きな木は聞きました。
「はい、次の目的地に飛び立とうとした時に突風が吹いて木の枝に翼をぶつけてしまいました。」と鳥は答えました。
「そうだったんだね。それは酷い目に遭ったね。」大きな木は続けました。「その傷が癒えるまでここで思う存分休んで行くがいい」
鳥は答えました。「ありがとうございます。でも私の仲間は次の場所に飛び立ちました。私は置いて行かれないよう何とか追いつきたいのです。」
「その気持ちはわかるけど、君は今飛ぶ事は出来ない。無理をすると命さえ落とすことになる。僕はそんな鳥達を沢山見聞きして来た。」
と大きな木が告げると鳥は
「はいでも、あの群には私の愛する人が居ます。私はあの人と過ごせない日々を想像することすら出来ません。一緒に居れない位ならいっそ死んでしまいたい。」鳥は涙を浮かべ肩を揺らして泣き崩れました。
大きな木は一瞬言葉を失いました。大きな木はその鳥を愛おしく思いながら、しかし気を取り直して鳥に伝えました。
「あなたの心の傷は痛い程良くわかる。でもまずは体の傷を癒しなさい。私の元で大人しく何月か大人しく過ごせば傷はすっかり治るでしょう。そして翼の傷が癒えればあなたは愛する人の元に還ることができる。それまで此処に居ればいい。」
大きな木はそうやって鳥達を見守りながら何百年も過ごしてきたのです。