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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (21)

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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (21)清子とたまの、独り言



 「どちらが先に惚れたのかは、定かでありませんが、
 いつのまにか、小春と喜多方の小原庄助さんが切っても切れない
 恋仲になってしまったのさ」


 ミイシャの頭を撫でながら、豆奴が小春と喜多方の小原庄助の
馴れ初めについて語り始めます。
喜多方の小原庄助は、由緒ある酒蔵の跡取り息子です。
蔵とラーメーンで有名な喜多方市には、12もの酒蔵が立ち並んでいます。
3万7000人の街にこの蔵元の数は、驚異的です。
全国的に見ても、特筆すべき数字とさえ言われています。


 町の地下を流れる飯豊山系の豊かな伏流水の存在が、
酒造りと、美味しいラーメンの麺造りに多大な貢献をしています。
「五百万石」や「京の華」、「華吹雪」といった酒造に適した米が盛んに
栽培され、こうした地元米の活用を中心に、酒造りが長年にわたって
行なわれています。


 「喜多方の小原庄助さんの処の酒蔵は、200年余りの歴史があり、
 代々、当主は、弥右衛門を名乗り、当人で9代目です。
 生産規模が2000石と、地酒の酒造メーカーとしては
 大手の部類に入ります。
 (1石はお米150kg相当。体積にして約180リットル)
 その喜多方の小原庄助と、売り出しだった小春が、
 たまたま湯西川で行き会います。
 財力と面立ちにも恵まれたいい男と、小粋で女盛りの小春の2人が
 恋に落ちるのに、それほど時間はかからなかったようです。
 愛し合うようになったものの、その後の2人には
 厄介ばかりがつきまといます。
 そりゃあそうです。
 いくら自由戀愛の時代がやってきたとは言え、名門で
 かつ大手酒蔵の御曹司と、売り出し中の芸妓の恋愛では、
 失うものばかりが多すぎます」


 「女というものは、いつの世でも大変だわよねぇ。
 惚れるのはいいが、訳ありの男を好きになると大抵は、身を
 滅ぼすことになる。
 危険だとは分かっていても、女もまた、そんな男をすきになっちまうのさ。
 そう思うだろう、お前も。ミイシャ」


 白い柔らかなミイシャの毛並みに顔を押し付けながら、
豆奴がうふふ笑っています。


 『ところが一概には、そうも言えないぜ。
 最近は美魔女なんていう言葉や、妙齢の悪女どもたちも増えてきた。
 女は油断ができない生き物だ。
 ミイシャだって、そのうちにどうなるか、わかったもんじゃねぇ』


 おいらは絶対の騙されないぜと、清子の懐でせせら笑っているたまの頭に、
コツンとひとつ清子がげんこつを見舞います。


 『痛てえなぁ。何すんだよ、清子。
 あれ・・・・お前。俺の言っていることがわかんのかよ』


 『お前が考えていることくらい、だいたい察しはつきます。
 お前も呑気だねぇ。
 よく周りを見て、おまえが置かれている状況を確認してご覧よ。
 春奴お母さんに豆奴姉さん。あたしとミイシャ。
 ほら、見渡すかぎり、ぜんぶ女ばかりだ。余計なことを言うと、
 全員を敵に回します。
 黙ってらっしゃいな、この口は。はい。
 お口はチャック。手はお膝』

 お行儀よくしてくださいね・・・・と、清子がたまに笑いかけます。


 『なんだよ清子。つれねぇ事を言うなよ。
 お前くらいは孤独な俺の味方をしろ。
 そんなことを言うと、もう、懐へ入って遊んでなんかやらないぞ』


 『いいわよ。もう懐へ、潜り込んでなんか来なくても。
 だいいちお前ったら、すっかり大きくなってきたから、なんだか重いのよ。
 お前のせいで、大事なあたしの乙女の胸が潰れてしまったら、
 あたしが、お嫁に行けなくなるじゃないのさ』


 『嫁に行くのか。清子は』


 『もらってくれるのなら、いつだって行くわよ,お嫁に』


 『もらわれて行くものなのか、嫁ってのは。
 自分の意思では決められねぇのか。人間の女も、見かけ以上に不便だな。
 好きなら好きで本能のままに行動をしちまえば、
 万事それでいいじゃねえかよ。
 やりたいから女のところにやりに行く。それだけが真実だろう』


 『あんたって子は、本能を剥き出しにしてしつこく迫りすぎるから、
 ミイシャに、いつも嫌われるのよ。
 女の子は繊細で、壊れやすいものなの。
 もうすこし女心の勉強をしておかないと、最後にきっと、嫌われるから』


 『へん。大きなお世話だ。
 下手な鉄砲だって、数を打つからたまには当たるもんだ。
 今に見ていろ。ミイシャのハートも身体も全部、
 すっかりと俺のものにしてやる』

 『ふぅん。お前は考え方が、いたってシンプルで気楽だわねぇ』


 『おう。シンプル・イズ・ベスト。これこそが真実の道だ。
 男の道は、惚れた女にひたすら、脇目もふらずにまっしぐらだ。
 止めるんじゃねえぞ、清子。ミイシャ一筋のこのおいらの熱い情熱を!』


 『誰も止めやしません。
 やんちゃな子猫の恋路なんかに、誰が興味があるもんか。へんっ』


 それよりももっと肝心なことは、小春姐さんと喜多方の小原庄助さんの
その後の恋路がどうなったかです、と、清子がたまの頭を撫でながら
小さな声でそっと、つぶやいています。


(22)へ、つづく