アイスエンジェル
僕の手は冷たい。きっと僕の手は一生、何かを暖めることができない。
生まれた時から僕にはある能力があった。それはモノを凍らせる能力だ。
初めてこの能力を使って何かを凍らせたのは、五歳の頃だ。もしかしたらそれ以前にも何かを凍らせたことはあるのかもしれないけれど、幼少の頃についての記憶を語ることはできないので、やはり初めて何かを凍らせた経験は五歳児の頃の、ペットのシャロンを凍らせた時だろう。
シャロンはただの三毛猫だった。どういう経緯で僕はシャロンを氷漬けにしたのかはいまだに思い出すことができない。ただ覚えているのは、僕は彼女を好きだった記憶だけだ。
冷たくなったシャロンの死体を、母親はひどく悲しそうな表情で見つめていたので、僕はできるだけこの能力は他人に見せない方が良いと思った。
僕の住む街には、雪女の住む森があると言われている。夏の季節になると鬱蒼と生い茂る森林は冬になると真っ白に染まり、慣れている人間であっても遭難することがあるので、できるだけ近寄ってはいけないと親からはキツく言われていた。
でも、その頃の僕はただの五歳児で、とにかくシャロンを殺してしまった負い目からか、できるだけ誰にも見つからない場所にシャロンを埋めてやりたかった。だから僕は、豪雪の季節でありながら雪女の森へ入っていった。
案の定、というのかもしれない。シャロンを凍った土の下に埋めた僕は森の中で迷った。
森の中は左を見ても右を見ても後ろを振り返って再び前を見ても、瓜二つの景色だった。どこに行っても同じ場所に戻ってしまうような気がして、やがて僕は泣き出し、そして見つけた。
森林の中を歩いていると、突然景色が開け、そこに山荘があった。
三階建ての山荘は切り立った崖の上にあり、僕は急いで玄関へ近寄った。階段を駆け上がり、扉をノックした。
何度叩いても扉は開かず、僕は無理に入ろうとしたけれど中から施錠されていた。
もうダメだと思った。このまま僕は凍死するのだろうかと考えた時に、ガチャリと鍵が開く音がした。
扉は開き、中から顔を覗かせた人影は――僕と同じくらいの年の女の子だった。
それが、僕と雪女との最初の出会いだったかもしれない。
生まれた時から僕にはある能力があった。それはモノを凍らせる能力だ。
初めてこの能力を使って何かを凍らせたのは、五歳の頃だ。もしかしたらそれ以前にも何かを凍らせたことはあるのかもしれないけれど、幼少の頃についての記憶を語ることはできないので、やはり初めて何かを凍らせた経験は五歳児の頃の、ペットのシャロンを凍らせた時だろう。
シャロンはただの三毛猫だった。どういう経緯で僕はシャロンを氷漬けにしたのかはいまだに思い出すことができない。ただ覚えているのは、僕は彼女を好きだった記憶だけだ。
冷たくなったシャロンの死体を、母親はひどく悲しそうな表情で見つめていたので、僕はできるだけこの能力は他人に見せない方が良いと思った。
僕の住む街には、雪女の住む森があると言われている。夏の季節になると鬱蒼と生い茂る森林は冬になると真っ白に染まり、慣れている人間であっても遭難することがあるので、できるだけ近寄ってはいけないと親からはキツく言われていた。
でも、その頃の僕はただの五歳児で、とにかくシャロンを殺してしまった負い目からか、できるだけ誰にも見つからない場所にシャロンを埋めてやりたかった。だから僕は、豪雪の季節でありながら雪女の森へ入っていった。
案の定、というのかもしれない。シャロンを凍った土の下に埋めた僕は森の中で迷った。
森の中は左を見ても右を見ても後ろを振り返って再び前を見ても、瓜二つの景色だった。どこに行っても同じ場所に戻ってしまうような気がして、やがて僕は泣き出し、そして見つけた。
森林の中を歩いていると、突然景色が開け、そこに山荘があった。
三階建ての山荘は切り立った崖の上にあり、僕は急いで玄関へ近寄った。階段を駆け上がり、扉をノックした。
何度叩いても扉は開かず、僕は無理に入ろうとしたけれど中から施錠されていた。
もうダメだと思った。このまま僕は凍死するのだろうかと考えた時に、ガチャリと鍵が開く音がした。
扉は開き、中から顔を覗かせた人影は――僕と同じくらいの年の女の子だった。
それが、僕と雪女との最初の出会いだったかもしれない。