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短歌連作 真夏の川で死んだ子供

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「死は救い?馬鹿だな話にならないよ、それじゃあここに判子押してね」

幾晩もホットミルクを飲むことで救われているいつかの子供

人間のからだの端のむこうからざりざりやってくる冬がある

ハッピーなおうちのなかで壊れてる瓶に入ったパスタのZ

幸せになりたいときは甘いもの食べてる 同族嫌悪みたいに

傷ついていないふりだけ上手くなる我ら湯豆腐たぷたぷ揺れる

完璧な子供になったはずなのにおかあさんがどこにもいない

銀の匙食んで生まれた人のただ選ばれて落ちるときにもひとり

見てらんないから貸してみ、って奪われて壊れてしまっても自尊心

いつまでもそのままでいてねなんていう呪いをうけた雪の降る夜

温かいお茶をくださる先生もわたしも生きているので悲しい

君のこと救えなかった僕のこと毎晩笑っているのはだあれ

素晴らしいインターネットああほらねイイネの数だけ実存するよ

まだ夜が始まらないので帰れないうどんをひとつしちみをつけて

世界中雨が降り続いているよはやく来てくれ傘は要らない

「友達が欲しい」そうかい 正解はゴミ箱だろう無口でピンクだ

路肩には無数のネオンひしめきて閨のさなかか 人間を飽く

あいしてる、あいしてるあいしてあいし、わたしの言葉ではありません

幽霊がうじゃうじゃいるへやのなか水がほらそこまで来てる

蛍火を探し求めた父さんを押し流してた川のにびいろ

悪夢1ミルクを3とあと少し真夏の川で死んだ子供を

「桃色の絶望君に教えよう」扉にさしいる靴の硬質

はやくはやく君に良い死を与えたい 「メールが一件届いています」

犬のくせ死に方わかんないのかい 喉の形を変えてみせてよ

モンスター叫べおまえを狩りにきたおまえの弱さを狩りに来たんだ

腐ってる腐ってないを嗅ぎ分けてうんと腐ったやつを頂く

テレビジョンデジタル放送に合わせたサインを以て逢瀬としよう

さようならいつかわたしにささくれたえんぴつをなげつけたひとたち

俺たちの壊れたことで完全になった地球儀から芽吹く蓮

ビルをなぎ倒すことができぬまま風落ちるはやくしねばいいのに

ビル風が殴り殺せぬ人々のさなかでひとりけもののようだ

かえってよ 僕たち同い年だったあの夏の日のひなたのなかに

川までは二キロあるからそこまでにさっきの返事を考えておく

ぼくたちは流れてくだろういっしんに回る木の葉は沈みもせずに

ヒロインは死んだよ消した番組のこちらがわのエンドを探せ

哺乳類が嫌い どんなやさしさと血肉と記憶を湛えていても

青春の永遠すでに死に絶えてラブが世界を終わらせていく