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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (15)

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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (15)ミイシャの憂鬱


 「どうしたんだよ。朝から元気がないぜ」

 いつものように、いつもの時間に2階の窓辺にやってきたミイシャに
今日は、いつものような元気がありません。
『どうしたのさ』と鼻を寄せるたまに、ミイシャがうなだれます。
寂しそうに閉じられていくミイシャの目線の先には、ピンクのカーテンが
ぴたりと閉ざされたままの、少女の部屋の様子が見えています。


 「なんだ。また、入院か?」

 「今回は長くなりそうですって。
 さっきから女の子のお母さんが、オロオロしながらそんな風に、
 電話を、あちこちにかけています」


 「大変だなぁ。小さいというのに。心臓の病気は・・・・」


 「生まれたときから、心臓に何らかの異常のある人は、
 およそ、100人に1人はいるそうです。
 自然に治ってしまうほどとても軽度の人もいるそうですが、
 何回か手術をしなければならない人や、心臓に負担をかけないように
 運動や日常生活を制限している人など、さまざまな人たちが
 いるそうです」

 「そう言われてみれば、そうだよな。
 おいらがここへ来て以降、あの子は、毎日ベッドに寝たきりだもんなぁ」

 
 「心臓病の人は、症状が出なければ、
 普通の人と見た目はちっとも変わりません。
 でも、万一の症状が出ないように、運動や日常生活などの制限をして、
 自分で病気の調節をしながら、懸命に生きていかなければなりません。
 他の子どもたちと同じように、遊ぶことも、登校することも
 自由にできません。
 心に痛みを感じながら、毎日を必死に耐えながら生きているのよ。
 心臓病って、身体にもきつい病気だけど、心にも
 とっても辛い病気なの」

 「おいらにも、おんなじ事が言えるぜ。
 君を愛するようになってからは、君なしで生きられなくなってきた。
 会えないときは、胸がうずいて、チクチクと一晩中苦しくて
 耐えられないもの」

 「嘘つき。うずくのは、
 あなたの持っているやんちゃな下半身だけでしょう。
 あたしの顔さえ見れば、すぐにやりたがるんだもの。このド変態.。
 あのねぇ・・・・女の子の身体は、とてもデリケートにできているの。
 受け入れる準備が出来た時にだけ、私はあなたに
 応えてあげることができるのよ。
 人間じゃあるまいし、始終(しじゅう)発情をしているのは、
 この広い猫の世界を見回してみても、きっと、
 あんた1人だけだわよ」


 朝から、なにやら不謹慎な会話を交わしているたまを尻目に、
清子が出かけるための身支度のために、てんやわんやで階下と2階の
部屋などをバタバタと行き来しています。



 「ところで。朝から何を走り回っているの、清子は。
 落ち着きはないし、誰が見ても、
 無駄にドタバタと走り回ったりして」

 「例の、1ヶ月づつの姉さん巡りの泊まり込みが、
 今日からスタートするのさ。
 朝までに、自分の荷物をまとめておけと言われていたのに、
 清子は、あの通りの根っからの呑気者だ。
 そいつを朝になってから突然思い出して、ああして、
 はた迷惑なほど、ジタバタと、走り始めたという訳さ」


 「一緒に行くはずの、お母さんはどうしているの?」

 「お母さんは、まったくの放任主義だ。
 毎度のことだから、悠然と構えているよ。
 慌てなくてもいいから、忘れ物だけをしないように自分で
 用意をしなさいと、下で涼しい顔をして、たぶん、
 悠然とお茶を飲んでるはずさ」

 「カバンの中に、同じものを入れたり出したりしてるだけじゃないの。
 ちっとも出かける準備なんか、進んでいませんねぇ。
 段取りも悪いけど、要領の方も悪いのねぇ、清子って」


 「いつものことさ。それも珍しくなんかないことだ。
 心に準備が出来ていない時に、突然何かを言われたりすると、
 たったそれだけでパニックになるんだってさ。清子という女の子は」


 「それじゃあ、少女のお母さんとまるっきり同じ病気じゃないの。
 いつも落ち着いていて、沈着冷静を保っているウチのお母さんが、
 今日に限ってドタバタと、取り乱しているわ。
 いつもと違う気配が漂っているもの、なんだかあたし、
 心配だわ・・・・」

 「ということは、いよいよ、緊急を要する事態の発生かな?。
 いいのかよ。君はこんなところで、おいらと、
 のんびりしていても」

 「だからと言って、
 あたしには手も足も出させないじゃないの。
 見守ることくらいしかできないんだもの・・・・
 ねぇぇ。清子ったら、大丈夫かしら。
 さっきから全然準備が進んでいないわよ。
 少女の様子も気にかかるけど、こっちの事態はもっと深刻だわ。
 これじゃ、いつまでたっても出発なんか出来ないわよ。ねぇ、あんた。
 清子のためにに、とっておきの猫の手でも、この際だから、
 貸してあげたら?」


 「嫌だね。
 愛用の浴衣とパンツだけ放り込んでどうすんだよ。
 だいいち、あいつ。俺が無邪気にあいつののパンツをかぶって
 遊んでいると、怒り心頭で、烈火のごとく怒りまくるんだぜ。
 日頃の恨みも充分にあることだ。
 ここはゆっくりと高みの見物と行こうぜ。面白いから」


 「清子にも問題はあるけど、
 あんたにも相当に、問題が山積をしているわねぇ。
 いったいどうなっているんでしょう、
 この家の中は・・・・」


(16)へ、つづく