おまもり
たとえば、イヤフォン。イヤフォンをつけている間は、外の世界の音が遠く聞こえるようになる。わたしは聞きたくないことを聞かなくてよくなるし、聞いてしまったという時には、聞こえなかったふりをすることもできる。
人間の1番強いところは声で、1番弱いところは耳だ。そのふたつはひどく相性が悪い。耳は常に開いているのだし。
サングラスも、わたしを守ってくれるもののひとつだ。眩しすぎる日射しや光を、安全な、思いやりに満ちたやり方で、わたしの目にそれが届くまでに遮断してくれる。
リップクリームも、ハンドクリームも、言ってしまえば洋服さえも下着さえも。
裸のわたしを守ってくれる、数少ないものたち。それらはなくても困るものではない。でも、あるべきものものなのだ。
つまりわたしは守られていたいのだ。裸で1人は不安なのだ。だからものものを身につけ、飾り、守ってもらおうとしている。
ある意味で、とても惨めで淋しい行為だ。