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書く理由

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人は考える。考える事は人それぞれ、時それぞれである。人は考えるときに頭の中で言葉を使い、その言葉は話したり、書いたりして外に出すことができる。
 書くことは話すことより難しい、話す時に伝わるものは言葉だけではない、顔や声、手振りがある。言葉以外のものが、伝える考えを補強する。反論されてもその場で付け足すことができるため、最初は不完全でも表現できる。他人の頭も借りて、自分の考えが成長する、対して、書くことは一人だけの作業である。他人に伝えるときは、すでに一つの文章となっている。話すことでできたごまかしはできない。書き上げたその文章が、その時の自分の完璧でなければならない。だから、何度も書き直す、書き直すと同時に考え直す、人は表現するときに最も考える。頭の中には言葉以外のもので溢れている、匂いや情景、旋律のように言葉に変換することなく、そのまま頭の中で転がしているものが沢山ある。最も心を打つものは言葉になっていないことが多い。書くことはそのことに気付かされる、同時にあらゆる形のものを言葉という一種類の記号に換えて表現することの難しさにもぶつかる。
 このようにものを書き表すとき、最も現れるものは自分である。日記のように、ただ一日の出来事を書くでも、その出来事を知ったのは自分であり、書くのも自分だから、そこには自分がいる。どの言葉を使うか、それを選んだときにはその文章には自分がいるのである。思想はもちろん、小説でも同じである。自分で選んだ言葉でつむいだ文章には自分がいる。今までの人生で、何を経験してきたか、何を理解してきたか、何を考えてきたか、そして何を訴えたいのか、それら全てを詰め込んだ頭を通して文章を書き出すことは、自分を表すことである。書いたものを読んでみる、その時初めて自分を知り、自分を考えるのである。自分を残す、それは生命の定義の一つでもあり、生命の方向性でもある。何十億年も続いた方向性に逆らいはできない。私も自分を創りたい、私の人生を表したい、そして自分を考えたい、だから書いてみようと思うのである。
作品名:書く理由 作家名:佐藤定食