透明なクラゲ
太平洋の大きな海原を、透明なクラゲがプカプカ、プカプカ漂っています。
波の凪いだ穏やかな日にも、嵐に狂った波の日にも、透明なクラゲはプカプカ、プカプカただ漂っています。
遠路はるばるやってきた、傷だらけの大きなウミガメに、手足をガブガブガブガブかじられながらも、透明なクラゲはプカプカ、プカプカ漂っています。
何度も何度も、大空を昇り降りした太陽と月が、あきれ顔で問いかけます。
「お前はいったい、何のために漂うのか?」
それでも透明なクラゲは静かに微笑みながら、プカプカ、プカプカただ漂っています。
やがてとうとう太平洋の大きな海原で、透明なクラゲは命を終えて静かに死んでいきました。
そうしてしばらくプカプカ、プカプカ波間を漂い、ついには見えなくなりました。