技巧と認識
冬
俺は人々の存在する轟音にまみれて
轟音が轟音のまま無音になる瞬間を選んでは
明日の墓場に一歩ずつ歩みを進めていた
背中に美しい光がとてつもない重量でのしかかり
かすむ視界を泳ぐ言葉の群れはそろって俺を蔑んだ
お前は俺の墓標ではなかったのか
俺が生命を終えたときに俺の非在を流し続ける
一個の分厚い記号ではなかったのか
だがお前は去っていった
大量の表情と大量の未来を残して
お前が去るのと交わるように俺の人生も去っていった
墓を失った俺はさかのぼって人生を失い
さらにさかのぼって始まりを失った
木の枝は知られぬ間に枯れ湧水は知られぬ間に濁った
犬は見えない動力で一層土に汚れた
俺はまったく新しい始まりを
まったく空虚な深海でつぶされながら抱き寄せた
宛先のない憎しみが俺を全宇宙に溶かし
お前の名前だけがその憎しみを待っていた
俺はもう墓場など要らない
俺は万人のてのひらの上に終わらない重みを加え続け
人々の舌を弱い苦さで潤すために宇宙に溶け続けるのだ