技巧と認識
緑
少年が黎明する正午に大きな鳥が日を遮った
その急襲する翳の奥にある形のない論理から
世界に緑の体系がこまごましく飛び火した
緑のいくつもの形態がその他の色と共に
少年の背骨から放射する柔らかい網を形成した
山の頂から見下ろすと沢山の山が街を取り囲んでいた
霞み、または青みがかり、または日を強く浴びて
街を支えているこの山々が少年の地盤を支えたのだった
少年は友達と山の迷路にいくつも痕跡を残した
細やかな枝や葉、草生えの光、隠れた目のような石たち
緑の細部は細い筆のように少年の血液に沢山の文字を流した
少年は果樹園で果実の商業の発端に交わった
いくつもの軌道に沿って積み重ねられた技術が実っていた
果実の確かな重み、その香り、その小気味よい形
少年もまた重みと香りと形とを、果実のように実らせていった
部屋は窓によって庭木へと開かれており
全ての本のページは梢のそよぎと優しく応答しあい
日の色の移り変わりによって変わる緑に
少年はじっくりとまなざしを落として行った
少年が衣服を変えるように木々は花を落とし
少年が花を摘み取ってくるとその空白を虫の声が埋めた
季節の巡りで一巡りする草たちの儚さが
少年の人生全体の儚さであり
季節の巡りによってより成長する樹木の堅実さが
少年の毎日の堅実さであった
少年は緑と契約を交わしたこともないし
少年は緑と愛し合っていたわけでもない
ただ、緑は根源から抹消に至るまで時間的に知覚するものであり
その知覚の重さを受け取ったり
その知覚に自分の構造を明かして行ったりすることで
少年と緑とは互いにその非定型を証明し続けていくのである