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桃井みりお
桃井みりお
novelistID. 44422
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お砂糖はいらないの。【完結】

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美味しくないなぁ……。

 いつもと同じように淹れたのに。
お気に入りのルネッサンスゴールドのピンクのマグカップ。

 シンガポールで一目惚れした、シルバーのキャニスターの蓋を開けて、
マックウッズのイングリッシュアフタヌーンを
少し贅沢にパールラインのティースプーンに山盛り2杯半。

 ブランツラウワーのアネモネ柄のミニボウルのなかで
お湯を吸わせておく。

 NOMAKUのソースパンを火にかける。
160ccなんてあっという間に沸騰する。
火を止めたら、お湯を吸って柔らかくなった茶葉を鍋へ。
蓋をして4分30秒。

 蒜山ジャージー牛乳を160cc鍋に入れたら
再び火をつける。

 ここではかき混ぜたりしない。
いい鍋はちゃんと熱が伝わって自然と混ざるもの。

 沸騰させてはダメ。
むしろ少し低めの温度までで十分。
猫舌だしね。

 茶こしはイギリス式。
ドイツ式なんてかっこ悪い。
かわいいルネッサンスゴールドのピンクのマグカップには
ヨーマン社のダブルハンドルのティーストレイナーが
お姫様のティアラみたいでお似合いなんだから。

 慎重にお茶を注ぐ。
立ち上る紅茶の香り。

 両手で包み込むようにテーブルへ運ぶ。
ミルクのほのかな甘味を感じたいから、お砂糖は入れない。

 
 完璧なロイヤルミルクティーの出来上がり。
いつもどおり。

 いつもどおりにできたのに。



 美味しくないなぁ……。


 携帯電話を手にとって、リダイヤルする。


 「……もしもし、あ、わたし……うん」

 「……明日、うちに来てよ……」

 「で、でも許したわけじゃないんだからね、
 ただ……、美味しいロイヤルミルクティーが飲みたいだけなんだから」



 食器棚の中のルネッサンスゴールドのブルーのマグカップを
見つめながら、電話を切った。

                                〈了〉