神さまにつながる方法
しかし、おにいさまは秀才タイプなのに剣道もそんなに強いのか。文武両道なんてズルい。いるんだよなー、時々、そういう人間。
「公立の医大にもスッと入ったし。オレは正宗に必死に教えてもらって、やっと私大に合格したけどね」
「……すみません。僕も同じ学校なんですけど」
「ははは、ごめん」
楽しそうだ。
あーそうか。
高原は、ブラコンなんだ。
ん?
「さっきバイトしたら、って話したじゃん。オレも赤池くんと一緒にバイトしようかな」
「ほんと!」
うわわわわ…………
まじ嬉しい!
高原と一緒にバイト!
さっきまで働くの嫌、とか思っていたけど、彼と一緒に働けるなら、ぜんぜん話は別だ。そっか、父さんのリストラも悪いことばっかじゃないって、こういうことかも。
僕はあまりの嬉しさに、さっき感じた違和感が、どっかにいってしまっていた。
「だって、私大ってお金かかるでしょ? オレんちもそんな裕福じゃないからさ、親に頼ってばかりじゃ申し訳なくって。なんせ、うちはふたりも息子が医大だから、ちょっとは稼ぎたいんだ」
うー
なんてしっかり者で謙虚なんだ。高原って。僕みたいに親に甘えてばっかりの人間からしたら、高潔にさえ見える。
キャンパス一の人気者。高原暁斗なのに。
「どんなバイトがいいかなあ……やっぱ時給がいいトコがいいよね。それで時間、短かかったら最高」
「そんなバイトありえないよ」
高原が笑った。
あーそうだよなあ。でも、高原は高潔だから、そんな普通のバイトなんてしちゃいけないんだ。こんなにカッコいいんだしな。うん、僕も外見は悪くないと思うから、美形しか出来ない仕事をしたらいいんだ。
詳しいことは学校で続きを相談することにした。
高原の家で夕食を食べていくよう言われて、僕は母に連絡した。すっかり、忘れていたんだ。
「あのね、お母さんのお祈りは正しい、てこと分かったよ」
母は僕の言葉の意味を図りかねているようだ。
「神さまは、僕たちが憎くて試練を与えられる訳じゃないんだ。その試練は僕たちの望みでもあるし、それが神さまに向かう道でもあるんだ。……だから、ちょっと大変だけど、僕も、頑張ってみるよ」
すごくいい友達と一緒にね。
「今まで甘えてばっかで、ごめんね」
「光喜……」
母は泣いているようだった。
「もうちょっとしたら帰るから。お母さんの好きな十字堂のプラムケーキ買って帰るね」
「そんなこといいから、気をつけて帰ってらっしゃい」
「うん」
なんだか胸がいっぱい。
僕は愛されているのが分かったから。
お母さんに。もちろん、お父さんにも。
そして
周りの人たちにも。
高原、高原の家族、千夏さん、ああ、そうそう、由美香も。
きっと
こういうエクスタシーが、神さまとつながる精神状態なんだ。
ちょっと分かった気がしたよ。
高原。
(完結)
作品名:神さまにつながる方法 作家名:尾崎チホ