コメディ・ラブ
熱愛
体も足取りも重くドアを開け、部屋に入った。
当然一人暮らしの部屋にはぬくもりは何もなく、昨日の夜から点けっぱなしにしたパソコンから無機質に起動音が流れている。
ベッドに横になると近くに落ちていたリモコンでテレビをつけた。
「俳優のAさんと女優のBさんの豪華結婚式が今日行われました。総額3億円と言われる今回の披露宴は」
テレビの芸能情報はいつも頭の中をなんとなく通過してなんとなく流れていく。
今日の子ども達の言葉を思い出した。
「昔の先生に戻ってほしい」
私はいつから恋にかまけて仕事をおろそかにしていたんだろう
しっかりしなければという思いが強いが何故か今はそれを行動に移す元気がなかった。
その時、テレビから晃という単語が聞こえてきて条件反射的に振り向いた。
「晃さんが優海さんのマンションに入ったのは午後10時ごろ、翌朝6時に出てきたそうですね」
「いやあ、映画の公開も近いですしビッグカップルの今後の行方に注目が集まります」
無意識にリモコンを手に取りテレビを消していた。
窓の外を見ると、いつもは見えるはずの幾千もの星達が今日は厚い雲に覆われて全く見えなかった。
作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko