なんて日だ! ショート7つ
秘密の香り
N子が心の中で叫んだ
― やっちゃったァァァ!!! ―
の叫びと共にベットから発射された恋愛ロケットはハイスピードでパジャマを脱ぎ捨て瞬時に高校のブレザーに着替えると大急ぎで母親の部屋に飛び込み鏡台の前に不時着した☆鏡の前では鬼気迫る形相でボサボサの髪をとかす、恋する乙女の姿がある。なぜだかこの日に限って目覚ましは鳴らなかったのだ。今日(2月14日)だけは早起きして、まだ誰もいない学校に、と考えていたのに!
髪をとかしながらN子は大声で発信していた。N子はその声が一階の母親に届くまで大声で発信を続けた。
N子『母さん誰かトイレ入ってんのっ! 』
三度大声で発信した後、母艦からの不本意な応答が返って来た。母艦からの返信によると、探査船「弟」がトイレに潜んでいるらしい。しかし、潜水艦「父」ならば厄介な敵だが、「弟」程度ならばN子にとっては大して難しい標的ではない。今度はトイレにて安息する「弟」に向かって更に大声で発信する。
N子『 (弟の人権侵害の為にカットさせて頂きます)っ!! 』
大声で探査船「弟」を威嚇射撃しつつ鏡台の前から飛び立つと、一旦は自分の部屋に再び帰還。鞄の中に赤いミサイルが搭載されているのを確認した後すぐさま発進、一気に加速し音速の壁を突き破る勢いでベイパーコーンを纏い階下に向かう。雷鳴のような轟音を響かせソニックブームを突き抜けて階段を駆け降りトイレに直行。勿論、それらのやり取りをトイレに潜む探査船「弟」はレーダーで正確にキャッチしている。女パイロットが轟音と共にトイレに近づくのを察知したかのようにドアは開き、同時に寝癖の酷いボサボサ頭の「弟」をトイレから叩き出すと、鞄を持ったままトイレに突入、そして一言
N子『窓開けてせいっ!! 』
女パイロットは速やかに司令室のイスに座り、30秒も経過すると、これまでの焦りがもはや無駄なことに気づき始めていた。すると、徐々に平常心を取り戻しつつあった。直腸もこの空間の意味を思いだしてリラックスをはじめ、ようやく密室の日課が始まろうとしていた。やがて、いつも通りの健康的な朝の生活習慣を謳歌しながら、恋する女パイロットは今後の作戦を練りはじめた。もちろん「手作りチョコ」を投下するタイミングだ。
:
i ピュ〜〜
休憩時間 l
昼休み ●
体育の授業中
放課後?
とにかく誰にも見られてはいけない
一度、< 秘かな恋愛 >という惑星に着陸してみたい
鞄から白いリボンの巻いてある、赤い小箱を取り出して
リボンを解き
フタを開けた
「手作りチョコ」の出来栄えを満足気に眺めた……
そして香りも味わった……
その香りを愉しみながら
女パイロットはヒラメイタッ☆
下駄箱に人影がないのは早朝だけとは限らない
ということを♪
N子 『授業が始まれば生徒も先生も教室に入る…
このまま遅刻して行けば、誰にも気づかれないで…
よく考えればアッサリ簡単だったわね☆
それに、朝だと彼の下駄箱には上履きが入っているし、
いくら彼の上履きだといっても大事な「手作りチョコ」に
嫌な匂いが付いたら大変だし
昨日3時間も掛けて作った「手作りチョコ」なんだし☆
そうよそうよ、シンプルよ♪
このまま遅刻すれば問題なく下駄箱に「手作りチョコ」を置ける
上履きのない清潔な下駄箱に♪
目覚ましのセットは神様がした優しい悪戯だったのかも☆
きっと日頃の行いが良いからだわ、フフフッ♪ 』
綿密な作戦を練りながら朝の生活習慣を完了させると、ウォシュレットの放水ボタンをポチッと押していた。この日に限って水量を「強」にしたのは、恋する女パイロットが気合いを入れる為だったのだろう。
〜〜 おわり 〜〜
作品名:なんて日だ! ショート7つ 作家名:夢眠羽羽