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関西夫夫  おいしい料理

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「え? コンビニで売ってるモンで、出けるんか? キャビアとかいるんちゃうん? 」

「キャビア? おまえ、何、作るつもりやってん? 」

「おまえ、キャビアのオムレツ食いたいって言うてたやん。」

「あー、そんなん言うてたなあ。確かに、あれも捨て難いな。・・・・・くくくくく・・・ほな、明日は、それを作ろう。」

「作るんは、俺。」

「うーん、無理やろ? これから、姫初めやるんやて゛? どう考えても、おまえ、腰いわしてるやんか。」

「そうやけど。たまには、俺かて。・・・・・ん? ほんなら、何、作るつもりなん? 花月。」

 材料は、コンビニで調達してきた、と、俺の旦那は言うてる。ということは、ちゃんと作るもんはあるということや。すると、俺の旦那は、ニヨニヨと口元を緩めて、俺が絶句するようなことをほざいた。

「水都のクリームアラモードとか、水都のチョコパフェとか、そういうの。いやあ、シーツが絶対にアウトやから、今までやらんかってんけど、ブルーシート敷いて、シーツ一枚お釈迦にする覚悟したら、でけるわな、と、俺は思いついたわけや。さすがに、アイスクリームは冷たいから、生クリームでやるわ。なんやったら、男体盛りもええけど、食うのが俺だけやと、材料が勿体無いよって、それも却下してんけど・・・・・水都さん、聞いてるか? とりあえず、おまえ、風呂で綺麗綺麗にしてくれるか? 俺、その間に生クリームホイップするから。・・・て、おい、水都? 戻って来いよ? 」

「・・・・コッコストかかるって・・・・」

「せやから、新年の下ろし立てシーツをアウトや。勿体無いやろ? 」

「・・・・体力いるって・・・・」

「今日一日、食うのにかかるわな? それも入れたままとなると、おまえ、体力的に危ないやろ? 俺、食う気満々やもん。」

「・・・・おまえの好物・・・・・」

「そら、おまえや。これに勝るもんはない。明日、キャビア買おてきて、オムレツもしたるからな。それでええやろ? 」

 ニヨニヨと笑顔で語っている俺の旦那は、とても嬉しそうで、背後から、「やるで。」オーラが漲っている。せやった、せやった、こいつはおかしいから、俺みたいなんを嫁に貰ろた変人やった、と、思い出した。



・・・・・・せや、せや、俺の旦那・・・・あほやったわ・・・・・忘れとった・・・・・・



 今時、それも三十路越えてトリガラみたいな身体に、クリームホイップしたいなんて、とんだアホや。

「・・・・・わかった・・・・好きにせぇ・・・・」

「おおきに。いやあ、新春から縁起がええわ。今年も愛してるで? 」

「どあほ、おまえみたいな変態、知らんわっっ。」

「変態で、何が悪い? やりたいことやってるだけじゃっっ。とりあえず、風呂で中まで洗ろてこい。」

「・・・・へーへー・・・・言うたんは、俺やから付き合おうたるわいっっ。」

 言ってしまったものは、しゃーない。好物が俺と言われたら、大人しく食われるしかない。というか、そんなことしたかったとは知らんかった。夫夫やって、十数年やが、まだまだ旦那の知らんことはあるらしい。

作品名:関西夫夫  おいしい料理 作家名:篠義