夜のブランコ
月の無い夜。
聞こえるのは オレと娘の足音 草の中で虫が鳴く声だけ。
児童公園があったので入ってみることにした。
公園内に灯りはあるものの かなり暗い。ちょっと怖い。
ふと、娘を怖がらせてみようと思った。
「ねえ、知ってる?昔、この公園で子供が死んだんだよ?」
娘は首を振る。
「しらない」
当然だろう。考えついたばかりの嘘だから。
10m程離れたブランコを指差して、低い声で言う。
「あのブランコから落ちて、首の骨を折って死んだんだ。」
「かわいそうね」
「あぁ、可哀相だね。でも、その後、変な噂が立つ様になった。」
「なあに?」
「風も無いのに、そのブランコが揺れるんだって。」
・・・・キィ・・・
ブランコが、揺れた。 一つだけ。 風は、無い。
・・・キィ・・・・・・キィ・・・キィ・・・キィ・・・・
四つ並んだブランコが、一つだけ、揺れている。
娘が、オレの手をぎゅっと握る。
・・・キィ・・・キィ・・・キィ・・・・
「あ、あれ~? お、おかしいな。」
「パパ?こわいの?」
娘がオレの顔を見上げて聞く。
「怖くないよ。パパは大人だもん。」
・・・キィ・・・・・・
「・・・パパ?」
「どうしたの?」
「ブランコがゆれてるのはこわくないよね。」
「どうして?風も無いのにブランコが揺れてたら、怖いじゃない。」
「だって、しんだそのこがブランコであそんでるだけでしょ?」
「十分怖いわいっ。」
「ホントにこわいのは」
「うん。」
「ホントにこわいのはね」
「何だよぅ」
「ブランコがゆれるのをやめたとき」
「えっ、どうして?」
いつの間にか、ブランコは揺れるのを止めていた。
「・・・うしろにいるよ。そのこ。」
確かに・・・何かいる。