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悠久たる時を往く

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 退路を断たれた魔界の軍勢は浮き足たち、アリュゼル神族やディトゥア神族によって次々に打破されていった。ヴァルドデューンはついに、ザビュールと戦いを始めた。あとがないザビュールは、戦いのさなか逃亡を図った。
 アリュゼル神族は、冥王を討ち滅ぼすことは叶わなかったものの、神々の力によって、逃げ行く冥王を暗黒の宙に幽閉した。

 アリューザ・ガルド大破壊の果てに、神々の戦いは終焉を迎えたのだった。



[アリュゼル神族の離別]

 冥王を封じたとはいえ、もはやアリューザ・ガルドは荒廃し、かつての楽園の姿を留めるものではなくなってしまった。
 アリュゼル神族も自ら危惧していたように、神々の力はアリューザ・ガルドで行使するべきものではなかった。神々の力とは、世界の摂理をはるかに超越するものであった。
 結果、大陸は分断され、神々と人間の理想郷であるはずの世界は、永遠に失われたのだ。
 アリュゼル神族は、アリューザ・ガルドから離れる決意をする。自分達は遙か天の彼方、“アルグアント”という名の天界の次元に移り、そこから世界の存在意義を与えるように、見守り続けることにした。

 アリューザ・ガルドの運行を任されるのは、ディトゥア神族である。
 ヴァルドデューンは、ディトゥア神族の長であるイシールキアに力を託した。これによりイシールキアは、アリュゼル神族に等しい力を持つようになった。
 またイシールキアは、四匹の聖獣を授かった。すなわち、東方の守護イゼルナーヴ、西方の守護ファーベルノゥ、南方の守護エウゼンレーム、北方の守護ビスウェルタウザルである。
 戦いを終局に導いたデトゥン・セッツァルは改心し、イシールキアのもとを訪れた。この天魔すなわち浄化の乙女ニーメルナフは、ヴァルドデューンの后フルーウェンの祝福を受けてディトゥア神族となった。ニーメルナフはのちにイシールキアの妻となる。
 ヴァルドデューンらアリュゼル神族が去った後、イシールキアは聖獣達を四方に飛ばし、全土に重くのしかかっている灰色の雲を引きちぎらせた。雲の合間を縫うようにして光の筋が次々と差し込み、千年ぶりに太陽が姿を現した。

 それとともに、眠りについていた人間達が目覚めることとなる。
 ディトゥア神族のアヴィトは、言葉を失ったままの人間に新たな言語を授けた。この言語はハフトといい、ディトゥア神族の言語テウェン語から派生したものであり、ラズ・デンのような力は持ち得ない。

 こうしてアリュゼル神族の時代は去り、アリューザ・ガルドの歴史は人間によって紡がれていくことになる。








作品名:悠久たる時を往く 作家名:大気杜弥