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悠久たる時を往く

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<創造の世> 一. ミルド・ルアン紀



        すべてのはじまり。


 すべてのはじまりには、ただミルド・ルアンのみがあった。

 超存在ミルド・ルアン――“自我なき源”――は、まったき空虚の中で身じろぎもせず、また考えることもせずに、永遠にも近い時の流れの中にて、ただ存在していた。
 しかしながら永きに渡る停滞にも、ついに変化が訪れた。
 ミルド・ルアンに自我が生まれ、そして死んだのである。また、それまでとどまっていた時間が、これを期に動きはじめた。

 超存在の死によって、その身体からは三なるものが誕生した。
 まずは一つ目として、大地が象られた。
 広大な陸地と、それを取り囲む海が形成されたのだ。そしてこれこそが、のちにアリューザ・ガルドとなるべき世界の、はじまりの姿である。
 この世界は、原初世界もしくはタインドゥーム世界と称される。

 また二つ目であるが、ミルド・ルアンの放つ声によって、幾重もの“音”と、“思念”が放たれた。
 これらは魂のもととなるべきものである。
 “音”と“思念”のなかには、そのまま遠くに飛び去ってしまったものもあるが、大地にとどまったものもあった。
 大地にとどまった“音”と“思念”はお互いに絡み合い、やがて大いなる生命となった。
 これこそが古神。すなわちタインドゥームをはじめとした、原初の世界の支配者達である。
(飛び去ってしまったものが、のちにアリュゼル神族となって、タインドゥーム世界へ帰還するのだ)

 そして三つ目。
 大いなる力すなわち“始源の力”が世界を取り囲み、たゆたうようになった。
(“始源の力”によって、ミルド・ルアンは自我に目覚め、かつこれによって死んだ。しかしこれらの力は、外的に形成された事象ではなく、ミルド・ルアンが自ら形成していたらしい。
 ――この事項については神々の思惑よりもはるかに複雑であり、我々では推し量ることが出来ないので割愛させていただく)

 これら、三なるものによって、原初の世界が創造されていくのである。






作品名:悠久たる時を往く 作家名:大気杜弥