ひかる(4/21編集)
そのパズルは、高校時代の後輩から誕生日プレゼントだった。当時豊一が大ファンだったアニメ番組の、五千ピースの結構大きなサイズだった。それだけでもすっごく嬉しかったが、パズルがちょっと変わっていたからさらに気に入った。
そのパズルはなんと、光を吸収して暗闇で光る。
「真っ暗な中で、カッコイイ主人公達がピカピカ輝いてるなんてすごいじゃないか!」
一生懸命パズルを組み立てて出来たら、額に入れて飾った。ちょうどリビングに入ったら、すぐ目に入る位置に。
その頃は職場が異動したり、親が入院したりで、いろいろ対応しなければいけないことがあったせいで、帰りは毎日深夜だった。
「夜道って朝帰りよりユーウツになるんだよね」
でも、家に帰ったら真っ暗な中でピカピカの彼らが迎えてくれて。
「トヨカズお帰り!」
「今日も頑張ったね! お疲れ様」
だから豊一は疲労困憊で家に帰ってきても、そう言ってねぎらってくれてるみたいに思えてまた頑張ろうという気になれた。そんなある日、偶然同じ仕事にブッキングして、直接顔を合わせたときにお礼ができた。
「あのパズルはすごいね! ありがとう、毎日あのパズルが光って出迎えてくれるから元気も出るよ」
好物のお菓子を箱買いして渡しながら言ったら、驚いた顔して後輩が言ってきたんだ。
「すぐに其処から引っ越すことをおすすめしますよ」
なんでそんなことを急に言い出すのかわからなかった。パズルを褒めて、引っ越しした方がいいと言われるなんて、誰が予想できるだろうか。
「どうして引越しの必要があるのさ」
思いっきり笑ったら、後輩はにこりともせずに肩を竦めて答えた。
「あのパズルは……明るいところから持ち込んで光り続けるのは、せいぜい数十分が限度なんですよ」
「先輩は、家で電気を消して迎えてくれるガールフレンドが住んでいらっしゃるんですか?」
それから、豊一はすぐに引っ越した。
パズルも、後輩に申し訳ないがなんだか気味悪くなって、物置の奥にしまったまま。
作品名:ひかる(4/21編集) 作家名:狂言巡