四神倶楽部物語
私は随分と迷いました。しかし、しかしですよ、やっぱりいけない魔女の甘い囁きに誘惑されて、開けてしまったのです。その禁断の扉を。
それ以来、現実とあの世との間にある世界で、佳那瑠に身も心も埋没させてしまいたい、そんな誘惑に負けてしまいそうな毎日でした。しかし、私は踏ん張りました。まだ佳那瑠とはねんごろな間柄にはなっていません。なぜなら、もし関係を持ってしまえば、男女の愛の淵に落ち、挙げ句の果てに、槇澤が山路隆史を殺したように、今度は私が槇澤良樹を禁断の扉の向こうへと追いやってしまう羽目になるかも知れないからです。
されども最近、行く先々の目の前の壁に、いきなり古代蝶鳥模様の禁断の扉が貼り付いたりするのですよ。
確かに佳那瑠は魅力あります。しかし、第二の禁断の扉、つまり死の世界への扉を開け、佳那瑠に連れて行かれる前に、早くこの状況から抜け出したい。そして仕事に没頭する日々に戻りたい。そんな思いでいた私です。そして、どうしたらこの第一の禁断の扉を閉じる、いや、なくしてしまうことができるのでしょうか? 毎日、一所懸命考えました。そして、やっとその答が見付かりました。
この禁断の扉を、早く誰かに。そうです、佳那瑠が好むイケメンに……、譲ってしまおうと。
しかし、不思議なんですよね。佳那瑠という女、不可解な世界で生きてるようですが、私は以前からの知り合いのようで、女友達というか同志のような気がしていました。
この禁断の扉の出来事は、あとからわかることなのですが、これから始まる物語の単なる序章であったわけです。つまり禁断の扉の後、実に不可思議な出来事がまるで堰を切ったかのように起こって行きました。そして私は、最終的にそれらと真正面に向かい合うことが天命だと思い至り、仲間と一緒に頑張っていくことを決意致しました。
さてさて、どういう経緯でもってそうなって行ったのか、その物語を、まことに秘密事項ですが、今回この場を借りて皆さまに御披露させてもらいます。