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00腐/Ailes Grises/ニルアレ

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【お出かけ 自転車 パンケーキ】







あの激痛の翌朝は、甘い、いいにおいで目覚めた。
はちみつの匂いだろうか。カチャカチャと金属のぶつかる音も聞こえた。

「……?」
「アレルヤおはよー。昨日は背中痛かったでしょ?大丈夫?」

ゆっくりと目蓋を開くと、昨日のようにまたピリピリと膜が破ける感覚がした。
視界にはキッチンでパンケーキを焼くクリスの姿が見えたかと思えば、クリスはニコニコとベッドに近寄ってアレルヤの顔を心配そうに覗き込む。
どうやらアレルヤが寝かせつけられていた部屋は半分がリビングのようになっていて、キッチンまでもが付いているらしい。
そういえば新生子用の仮のベッドとロックオンが言っていたような気がする。

「お、おはようございます、クリス…さん」
「やだクリスでいいよ。顔色は悪くないねっ……ていうか、私も手伝ったほうが良かったかもね」

ね、ロックオン、たよりないでしょ、と眠りこけるロックオンをクリスはフライ返しで指差した。
どうやらロックオンもあの後眠ってしまったのか、狭いベッドで二人で眠っている様子をクリスに見られてしまう。
別にやましい事は無いが彼の立場上このままではいけないような気もして、アレルヤは気後れしながらも判断を仰いだ。

「あの、僕はどうすれば」
「そのバカ転がしていいから、取り合えず服着てもらえる?ここ女の子が多いから」
「あー…えーと、こんな格好ですみません……」
「いいよ、事情は分かってるし」

既にチェストの上に新しいシャツが用意されていたが、クリスに言われたとおりロックオンを転がす事にアレルヤは抵抗を覚えてしまった。
そのままクリスはリビングに置いてある大きなダイニングテーブルをセッティングしに戻ってしまい、半分自分に覆い被さるようにして眠るロックオンの肩を掴んだ。
そこには昨晩、痛みを耐えるようにして噛み付いた自らの歯形が、羽の刻印に被さって赤く滲んでいた。

「ええと…ロックオン?起きて下さい…」

ゆっくりロックオンの下から脱出を試みる。
右腕で上半身を支えながら、左手で横たわったままのロックオンの体を揺すってみる。

「う、うぅ」
「あーもー!子供たち先に起こしちゃうよ?またねぼすけロックオンって笑われちゃうよ?」

唸ってまだ眠りたいと頭を抱えるロックオンに痺れを切らしたクリスは、手にしていたフライパンとおたまでガンガンと音を立てた。
どうやらロックオンは朝が弱いのか、耳を塞ぎ眉を顰める。

「それだけは、ヤメろ……」
「お・き・ろー!アレルヤが潰されちゃってるじゃない!」
「起き、起きるよ!……って、アレルヤ?」

アレルヤ、という声を聞いてぎゅっと瞑られていたロックオンの目蓋が開く。
するとまだロックオンという重石が半分乗ったままのアレルヤは、しっかりとその翡翠色の瞳と視線が合ってしまった。
なんだか少し気恥ずかしい。だけど視線を外してはいけないような気がして、アレルヤはおずおずと朝の挨拶をした。

「おはようございます……」
「お、おはよ…ってうわーごめん!狭かったよな!?」
「全然大丈夫です!それよりもロックオンこそ腕とか…その、肩とか大丈夫ですか?」
「へーき平気、こんなの湿布貼っときゃすぐ治る」

アレルヤの上から飛び退くようにしてロックオンはベッドから降りた。
眼鏡を掛けたまま眠ってしまったのか、頭からズレたそれをロックオンは探した。
細い銀縁のそれが歪んでしまっていないか確認して、しっかりと耳にかける。
心配などいらないと言ったものの、アレルヤの下敷きになっていた腕は少し痺れていたが、ロックオンはそのまま黙っていた。

「ふーん、ロックオンはもう「さん付き」じゃないんだあ」
「えっ?」
「歳も近いし、同性だし……打ち解けるのも早いか」

どこか安心したようなクリスの声が上がった。
そういえば、昨日この部屋に集まっていた子供たちは殆どが女の子たちだったのを思い出す。
ロックオンを除いて、妙齢…というにはなまめかしいが、ある程度自立出来るほどの年齢であろう子は、女の子しか居なかった。
男の子はまだ未就学児前後の幼い子供らばかりで、特に幼い子供はまだよちよち歩きの乳児であったのを思い出す。

「ほら早く、シャツ着て、みんな起こしてくるからさ」

そう言われ、アレルヤは慌てて白いシャツに腕を通す。
焼け焦げた痕がチリチリと、まだ熱を持っていた。




<改ページ】>



子供たちが既に焼き終えたパンケーキを頬張っている横で、働きに出ている年長組以外はコーヒーを啜っていた。
太陽は既に昇りきり気温は上昇したが、屋内は少し肌寒い。
暦の上では冬に入る頃だ、とロックオンがアレルヤに教えてくれた。
そんな折、クリスがロックオンを呼ぶ。

「ねえロックオン、今日はアレルヤの服買ってあげたらどう?」
「ん…ああ、ずっと俺の服着せてたしなあ」
「えっこれロックオンの服だったんですか!?」
「そんなに驚く事か?嫌だった?」
「あ、いや…全然知らなかったので、」

思わず着ていた服を掴んでアレルヤは声を大きくする。
では昨日自分が着ていた服は…とアレルヤは尋ねようとしたが、どのように返事がされても、自分の発する言葉はロックオンを嫌な気分にさせてしまうような気がして口篭ってしまう。

「一緒に買い物行って来なよー。灰羽連盟からの新生子通知も来てたし、ついでに行ってくれば?」
「逆だろ、連盟に報告行って、ついでに買い物」
「どっちでも変わらないって」
「はいはい、…じゃあ、アレルヤ、今日は出掛けるか」

子供たちはクリスに任せて、とロックオンは笑った。
気にしてなどいないのだろう、この人は。ほんの少しだけアレルヤは安堵して、笑みを返す。
それはとてもぎこちない微笑であった。

出掛ける用意を済ませて、二人は枯れかけのすすき野の丘を下りて行く。
人一人通れるくらいの小さな道だ。
丘を下りれば、駆り終えた後の麦畑のあぜ道を通って、森へとロックオンは足を進ませた。
どうやらそちらの方が灰羽連盟と呼ばれる所への道らしい。
そもそも、ホームを出るのが今日が初めてなアレルヤはただロックオンの後を追うしか出来なかった。

「灰羽連盟…って、なんなんですか?」
「ようは俺らの保護とか、生活を保障してくれる慈善団体だよ」

灰羽は親がいないから、必然的にそういった後ろ盾が必要になるんだ。
ロックオンはアレルヤの質問に丁寧に返した。
繭から生まれる灰羽と呼ばれる人間には、親も兄弟も無いと言っていた。
それどころか生まれるのは赤ん坊ではなく、このアレルヤのように、大人も生まれるのだから……。
自分はこの世界の何もかも知らないんだな、とアレルヤはぼうと考えた。
大人、と言ったが、体ばかりが大きく、中身は何にも無い。
なんとなく、大人だった気がする。
もしかしたら繭から生まれる前の自分は、本当に中身の無い人間だったのかもしれない。
だからこんなにも自分は……

「その代わり決まりごとが付属して来るけどな」
「決まりごと?」

アレルヤの質問に言葉を続けるロックオンの声で、アレルヤの思考は引き戻された。
内心で、今自分はおかしな事を考えていたのでは無いかと自分自身を勘繰る。