時間
時間よ、無機質な時間よ、
ときに荒くときに優しい時間よ
突然、躍り狂う舞姫の如くに
激しく乱れてすぐさま
静寂に返る
時は静寂のうちに刻む
常に同じ速さで
時止まれと願えど
時は聞き入れ得ぬか
時は流れをとめどなく
物事は動きつつ
生から死へ
過去から未来へ
一意に時は進む
野原を吹き抜ける微風のように
爽やかに
不思議な気配を持ちやがて
突如嵐へ変化する
だが
それでも時に祈るのは
ただひたすら…
時間よ、無機質な時間よ
時間は機械のように刻む
時間が神の化身なら
私の願いを叶えて
時間よ、止まれと
Ⅱ
相対性理論の狭間で
無表情に漂う時間は
お前たち不完全には
創り主が分かるまい
ビッグバンより今へ
定むる速度で平等に
あらゆる意思に与ふ
始原生命たる微生物
海底を這う三葉虫も
密生するコケシダも
地上の覇者たる人も
アインシュタインが
時空の謎を解いて尚
機械仕掛けの時間は
神の意志をなぞりて
未来へと進み続ける
相対性理論の狭間で
虚ろに漂う時間から
お前たち不完全への
悲鳴は聞こえるのか
見よ!時が落ちる!
機械仕掛けの神さえ
時間を止め得る術を
最早永遠に失った!
Ⅲ
せわしなく行き交う大通りで
私はあなたと出会った
目と目があったとき
宇宙と私は切り離された
確かにそのとき
時が止まった
とめどなく流れる時間の中で
無数の一瞬が永遠になる
無数の永遠が重なって
記憶の大海は豊かに彩る
たとえあなたが私から離れても
たとえ私の心が色褪せても
この一瞬は
永遠に永遠
愛されるということには
好きという言葉はいらないから
この一瞬が
永遠になってほしい
時間よ、あなたはここにいたのですね
私たちの心の中に