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海の上のクリスマス

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どこまでも続くような海の真ん中に
小さな島がありました

本当は、とても大きな島だったのだけれど
海の水が増えてしまったせいで、とても小さくなってしまったのです
真っ白な海岸が広がっていたのに

今は、海の水際は森のすぐ近くまで来ていました

その島だけではなく、他の場所もどんどん小さくなっていて
お金持ちの人たちは、宇宙船に乗って
他の星に避難してしまっています

その島にも沢山の人が住んでいましたが
もう、残っているのは少しの人たちになってしまっています

島に住んでいる親子が居ます
お母さんと小さな男の子の親子です

二人は、海岸の近くに住んでいたけれど、山の方に
避難していき、今は頂上近くまで海の水から逃れて住んでいます

一年中、あまり温度の変わらないこの島にも
毎年クリスマスはやってきます

お母さんは、貧しいながらも毎年男の子にプレゼントを用意していました
サンタクロースがやって来ていると信じている男の子に
そのままサンタクロースを信じていて欲しかったからです

クリスマスを目前にしたある日

「おかあさん 今年もサンタクロースは来るのかな?」

もう、プレゼントを用意する余裕のなかった母は
そんな男の子の問いに、言葉を詰まらせました

「サンタクロースは、どんなお願いでも聞いてくれるのかな・・・」

「どうかな・・・お願いが届くといいね」

そんな返事しか、返す事が出来ませんでした

「僕、今度のクリスマスにはプレゼントなんか欲しく無いんだ」

「でも、お願い事はあるのでしょう?」

不思議そうに母が尋ねると

「あるよ」

と、とても明るい笑顔で
でも、とても真剣な顔で答えました

「ずっとここで住んでいたいんだ
お母さんと一緒に、ずっとここに居られたら
何も欲しいものなんて無いよ

だから、今日から毎日サンタクロースにそうお願いする事にしたよ」

母は、どんなにお金があったとしても
その、息子の願い事は叶うものでは無い

そう考えると、とても悲しい気持ちになり
けれど、一緒に居られれば何も要らないという言葉が
とても嬉しくもありました

作品名:海の上のクリスマス 作家名:fool