小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

夢と少女と旅日記 第2話-1

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 

 L.E.1012年 5月2日

 今日は夕方までは宿屋のオーナーからノートパソコンを借りて調べ物をしていました。エターナルドリーマーについての情報をもっと多く集めておいた方がいいと思ったからです。
 ……あ、別にドリームダイバーとしてやっていこうと思った訳じゃないですからね!? エターナルドリーマーについて調べればウェイクリングの外し方も分かると思ったからですから、勘違いしないでくださいねっ!?
 とまあ、一人でツンデレごっこをしながら調べた情報ですが、若者の方がエターナルドリーマーになってしまった人の数が多いこと、そして男女比で言うと、やや女性の方が多いことは分かりました。
 しかし、このことは少ないデータから導き出したものですし、それが分かったからといって何かの足しになるかと言われれば疑問です。とは言え、一つの考察をすることはできます。夢魔が狙うのは心の弱った人間ということですから、悩み多き若者が狙われ、心の弱い女性の方が夢魔に負けてしまいやすいということでしょう。あくまで比較的というだけであって老人も狙われているようですが。
 要するに、何も分からなかったのとほぼ同義です。地域もバラバラで一貫性はなく、なんらかの規則性、法則性を見出すことはできませんでした。
「標的は無差別に選ばれていると考えるべきか……。もしくは、真の標的を隠すために無差別であるかのように見せかけている? うーん、どのみちこれだけのデータからじゃ、夢魔の目的すらはっきりしないなあ」
「夢魔の目的なんて決まってますよ! 人間の魂を食らうことが目的です! 単純に私利私欲のためにやっているとしか考えられません!!」
「いや、単にそう考えるのは安直過ぎるというか……。つーか、ナチュラルに話しかけてきましたけど、いたんですか。虫が飛んでるのかと思いましたよ、エメラルドさん」
「私のどこが虫なんですか!? こんなでかい虫がいたら、怖いです! ……あれ、ところで、パソコンで何をしてるんですか、ネルさん?」
「え!? そこから説明必要でした!?」
 といったところで、私はエメラルドさんにパソコンで調べた情報について教えつつ、今までで分かっていることを整理しようと思いました。
 まず一つ。エターナルドリーマーと呼ばれる人たちは2、3週間ほど前から話題となっていて、世間では永遠に眠り続ける病気であると思われているが、そうではなくナイトメアという夢魔(夢の世界に棲む魔物)が率いる夢魔集団にとりつかれているのだということ。
 そして、天界に住む女神ダイアモンドがそれに気付き、特別な魔法を使えるわけではない人間でも夢の世界に入れるようにとウェイクリングと呼ばれるマジックアイテムを開発し、同じく天界に住む妖精たちに下界の人間たちにその指輪を託すように命じたこと。私の隣で虫のように飛びまわる緑の妖精エメラルドさんもその内の一人であるということ。
 そんなこんながあって、美少女旅商人である私、ネル・パースはそのウェイクリングを偶然拾って指に嵌めてしまい外れなくなってしまって、夢魔と戦う羽目になってしまったこと。
 エターナルドリーマーが見る夢の世界は、元々はその人自身が生み出した願望の世界であるが、それを夢魔たちが都合のいいように『設定変更』を行なっているということ。それに対抗する手段としては、ウェイクリングを嵌めているドリームダイバー(これは私が命名しました)の力が必要であるということ。
 ドリームダイバーは夢魔に対抗する必殺技として『夢幻創造』という魔法を使うことができるということ。『夢幻創造』とは、自分が想像した理想の武器や道具を何もないところからでも無限に創造できるという夢の世界で使える魔法であるということ。
 そして、我々ドリームダイバーの目的は、メアリー・スーと化したエターナルドリーマーを夢魔の魔の手から救い出すこと……。私も別に乗り気になったわけではないですが、夢魔のやっていることは許せません。食い止める手段があるのであれば、私はできる限りのことをやってやるつもりです。
「とは言え、これからどうするべきでしょうか。エターナルドリーマーとなってしまった人は分かっているだけでも、既に1000人以上の人が夢魔の餌食となっています。これらの人たちを一人ずつ救っていくだけでいいんでしょうか。それより、親玉であるナイトメアをどうにかすべきですよね。どうにかナイトメアの居場所を突き止められないんですか?」
「ううーん、女神様も必死になって調べているようですが、今のところ手掛かりはないそうです……。夢魔を問い詰めようとしても、危なくなったらすぐに姿を消してしまいますし……。とりあえず我々にできることは、目の前で困っている人を救うことじゃないでしょうか」
「本当にそれでいいんでしょうか……。ああ、いえ、別に私はやる気になんかなってないんですが、何か策はないのかなって」
「うふふ、ネルさん。私はネルさんがすっかりやる気になってくれて嬉しいですよ」
「やめて、そんな目で見ないで!」
 そんな感じで、エメラルドさんは生暖かい目をしやがっていたのですが、パソコンの画面をじっと見つめてはっとしたような表情になりました。
「あっ、ネルさんネルさん。ここに名前が載ってるロレッタという人。この町の人じゃないですか?」
「うん? それがどうかしました?」
「いや、だから……、エターナルドリーマーとして名前が載ってるってことですよ? すぐになんとかしに行かないと!」
「あー、はいはい。分かりました分かりました。さっさと行けばいいんでしょ。……今日はのんびりしたかったんですけど」
 でもまあ、仕方ないんで渋々出かけることにしました。そして、チェックアウトと挨拶のために受付の前まで行ったとき、例の女性従業員とカウンター越しに会話しているメイド服の女性を発見しました。私たちの姿に気付いた女性従業員はこう話しかけてきました。
「あ、ネルさん。ちょうどいいところに、実はこちらの方が――」
「……いいです。私の口から説明します……。初めまして、ネルさん……。私はメシティカという者で、フローラル家に仕える使用人の一人、……でした。実はティアナ・フローラルお嬢様がエターナルドリーマーとなってしまい、この宿屋にも同じくエターナルドリーマーの人がいると聞いてきたのですが……、それをあなた方が解決なされたということでお願いがあります……。ティアナお嬢様もどうか救ってはいただけないでしょうか……」
「はぁ……、昨日の今日でこれですか……。で、エメラルドさん、こういう場合はどうするんです? 確かロレッタという方のところに行くんじゃありませんでしたっけ?」
「ええっと、こ、こういう場合はすぐ目の前で困っている人が優先です! 速攻でティアナさんという方を救って、ロレッタさんという方も救いましょう!」
「はぁ。やっぱりそういうハードスケジュールになります? というか、あなたの話だと、私以外にもドリームダイバーの人はいるんですよね? その人たちに協力を依頼するという形でも……」