リスト(初めてのお使い)
じゃがいも 4こ
たまねぎ 3こ
にんじん 2ほん
かれーのおうじさま 1はこ
ぶたにく 300ぐらむ
今日は、初めてのミッション。ある商店街に潜伏するある組織の残党5人を暗殺すること。初仕事にして、1人で5人、次々に暗殺する仕事を任されるなんて、私も相当期待されているわね。変装も完璧。どこから見ても若奥様。このレトロな買い物カゴもおしゃれでしょ。まさか、この中に、拳銃とターゲットのリストが入っているとは、誰も思わないでしょうね。
安部 礼二(魚屋)
根越 栄太(果物屋)
佐藤 俊夫(肉屋)
水田 真理(駄菓子屋)
井関 早苗(花屋)
いったーい。よそみをしてたら、おばちゃんにぶつかって、ころんじゃった。でも、わたし、なかなかったよ。おばちゃんが、わたしをたたせてくれて、かいものかごをひろってくれて、「えらいね」っていってくれた。
いけない、いけない。私としたことが、子供にぶつかってしまったわ。泣かれると面倒だと思ったが、懸命に耐えている。かわいいじゃない。急いで立たせて、ぶつかったときお互い取り落とした買い物カゴを持たせてやる。あら? 私のと同じだわ。まぁ、いいわ。「偉いね」って褒めてあげた。
しょうてんがいに、ついたわ。おかいものりすとを、みなくっちゃ。
安部 礼二(魚屋)
根越 栄太(果物屋)
佐藤 俊夫(肉屋)
水田 真理(駄菓子屋)
井関 早苗(花屋)
あれぇ? へんだなぁ? おさいふは、あるかなぁ? あれぇ? おさいふが、ぴすとるに、なっちゃた。
商店街に着いたわ。念のため、リストを確認しましょう。
じゃがいも 4こ
たまねぎ 3こ
にんじん 2ほん
かれーのおうじさま 1はこ
ぶたにく 300ぐらむ
よし、まずは八百屋ね。
「おじさん。ジャガイモ4個と玉ねぎ3個とニンジン2本下さいな」
「いよっ、奥さん、きれいだね。玉ねぎ1個おまけしちゃおう」
「まっ、おじょーずね」
うふっ、ニンジンはお星さまの形に切って、ご飯は多めに炊かなくちゃ。
ああ、あの人たちの喜ぶ顔が目に……。
……って、違ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっう。激しく違ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっう。
ってか、私のノリ突っ込みのノリ、長すぎーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっる。
どこまでノッてんのよ。危うく肉屋まで行くところだったわよ。いやいや、肉屋は最後。って、そーーーーーーじゃない。
あれか? あのときか? さっきか? あのガキとぶつかったときか? あのとき、買い物カゴが入れ替わって? ……っ! まずいじゃない。あのガキ、ピストルもって……。
あれ? このぴすとる、ぱぱのとおんなじだぁ。わたしつかえるよ。ここのこれ、あんぜんそーちっていうんだよね、これをはずすと、うてるんだよ。このりすとの、おじさんやおばさんを、ころせばいいのかな? さかなやさんのおじさん。かくれんぼしながら、うっちゃえば、わからないよね。よーくねらって。
安全装置を押さえるように拳銃をわしづかみにする。間一髪、間に合った。
「おいたはそこまでだ。あんたの仕事はこっちだよ」
そう言って、本来のリストの入った買い物カゴを渡した。
作品名:リスト(初めてのお使い) 作家名:でんでろ3