復讐のカルテット 事件編
授業終了のチャイムが鳴り響く。凍てついた風が背筋にあたり、思わず首を竦めてしまった。
太陽は沈んだ。空を見上げると、星一つない夜空が広がる。数時間前までにぎやかだった校庭も今や静けさが漂っている。
――もしも今、誰かいるとしたら、それは誰なのだろうか。
青葉は校庭を横切りながら考える。
授業終了後はやることがなかった。部活動にも入っていない彼女は図書館で時間を過ごしていた。といっても別に読みたい本があるわけでもなく、じっとメールの文面について思いを巡らせていただけだったのだが。
この正体不明の送り主からメールを受け取るようになってから既に半年以上の時間が経過している。
何回か送り主の素性を確かめようとしたのだが、失敗に終わった。インターネットの知識があればもしかしたら送り主の住所くらいは特定できるのかもしれないけれど、彼女にそのような知識も技能もなかった。
――人は、殺せるのに。殺人鬼にもできないことはあるんだ。
と、手のひらをじっと見ながら夏希は呟いた。
――そうだ。私は、殺人鬼だ。きっと、その見解が一番正しい。
一瞬だけ目を閉じた。景色は真っ暗になった。目を開くと、校庭の隅にある街頭の光だけが眩しかった。
――行こう。
作品名:復讐のカルテット 事件編 作家名:カワサキ萌