心の中の雨の音(詩集)
伏せる葉
まるで死んだふりしているようだし
身を投げ出しているように見える
でもそれは青々としていて元気だ
風にも負けないし雪にも耐えられる
短くなってゆく日照時間を
最大限に利用するために
彼岸花の葉は地面に横たわる
あの情熱的な赤い花を咲かせるには
まだまだ長い蓄えの時間が必要なのだ
無様に今は我慢のとき蓄えのとき
その蓄えに託して春爛漫の頃に枯れる
今この格差に生きる底辺の人たちが
同じように伏せて精一杯頑張ってみても
彼岸花のように花咲く未来を約束されない
背の高い樹木は葉を落とし地表に光を当てるのに
一晩で何百万円もの豪遊ををする者がいて
一方で植物よりひ弱で条件の悪い人たちがいる
それでも今は伏せる葉になって
根だけはしっかりと張り石をつかめ
理不尽な言辞に耐えるために
プライドを保つために
そしていつか投げつけるために
作品名:心の中の雨の音(詩集) 作家名:伊達梁川