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心の中の雨の音(詩集)

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十月桜の君



公園のベンチの側
一本だけある十月桜の花が咲いた
それは春に咲いた時より花びらが大きく見える
まるで秋の私が本来の私ですとでも言うように

でもそれは木全体が一斉に咲くことは無い
《準備が出来た順に行きましょう》
そういった感じに少しずつ咲いていく

花の名前も知らず
花に対する感動も薄かったあの頃
「あ、狂い咲き」
と私が言ったのを
あなたは笑いながら訂正して
「それはね十月桜と云ってね。今頃咲くんだよ」
と教えてくれた
その控え目な笑顔が十月桜の雰囲気に似て
思わず見比べた
清潔でいてどこか不幸を背負ったような
白い小さな花

その花は寒くなるにつれ
花びらが小さくなったようだ
どんどん寒くなっても次々と咲いて
雪が降った日も咲いていた
弱々しそうで逞しい
そんな風に
二人の恋も続くものと思っていたあの頃

結局雪と一緒の桜を見たのは私一人だった
私が
他の鮮やかな花に目が行ってしまったせいだ

今もどこかで逞しく咲いているのだろう
十月桜の君