心の中の雨の音(詩集)
正月二日
公園は静かで
まだ十月桜が咲いている
この花はあきれるように
しつこくて健気だ
まだ午後三時を過ぎたばかりなのに
陽は西に傾いていて
地面に散らばっている栴檀の実の
影を長くのばしている
老婆が二人
ベンチに座っていて
一人はしゃべりを止めず
もう一人は生あくびを連発する
久しぶりの散歩なのか
子犬はリードを引きちぎりそうに
それでも嬌声をあげている女を
引っ張っている
もう葉を落としてしまった木を見上げる
その先には
白い上弦の月がくっきりと見え
時間の概念をあいまいにしてしまう
私は寒さも気持ちも
あいまいになっていて
そもそもあいまいが好きなのだと
ふと思う
きっと今が幸せなのかもしれない
などと思いながら歩く私は
公園を通り抜けて
当初の目的の買物に向かう
正月二日の住宅街は
悲しいほどに静かだ
作品名:心の中の雨の音(詩集) 作家名:伊達梁川