或る少年の夢と現実
或る少年の夢と現実
彼は自らの十年後を思い描いていた。
未来の自分には愛してくれる美しい恋人があるはずだと思った。
そのひとを抱きしめることが、幸福だと思った。
だが、彼は自分が必ず死ぬということを知った。
それは恐ろしいことだった。
ただしそれは、明日や明後日ではない。
来年でも再来年でもない。
ずっとずっと、先の先のことだと思った。
そうでなければならないと思った。
死ぬ前に一度は恋愛をしたい。
美しく、優しい恋人を抱きしめたい。
だから、永く生きたいと、彼は思った。
彼は十二歳の少年だった。