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クリスマス前なので お別れしましょ☆

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「君の事を嫌いになりたいので、この場で脱糞してくれないか?」

 目の前の男が何を言っているのか一瞬理解に苦しむ。やがて脳が彼の言葉を受け入れると、私の唇はゆっくりと開き、渇いた声で言葉を紡いだ。

「今昔物語じゃねぇんだから……」
「君はやはり、素晴らしくウィットに富んだ女性だなぁ。僕は本当に君が好きだよ。だけれどもクリスマス間近なんだ。僕はクリスマスに彼女がいるわけにはいかない。そうだろう? 僕はあくまでクリスマスには一人悲しく二次元の恋人達と過ごさなくてはならないのだから」
「そしてその様子をネットで配信、ですか」
「そう。僕はね、嘘が大嫌いだ。本当は彼女がいるのに、いないふりをして、そして仲間意識と蔑みのもと、人気を集めるなんてゲスい事はしたくない」
「あなたが私にした要求はゲスくないとでも?」
「正当な要求だろう? だってそれくらいのインパクトがなければ、僕は君を嫌いになれないよ」
「私はあなたからのこの要求に百年の恋も冷めたわ」
「え?」

 え? じゃねーよ。何キョトンとした顔してんだこのヤロー。

「それって……えっと、つまり」
「つまり私は愛想が尽きたって事。お別れしましょうって事よ」
「え? ちょっ、ちょっと待ってくれ!」

 くるりと踵を返した私を彼が追う。一体これ以上なんの用があるというんだ。目的は果たされたはずでしょう! それとも何? 私が「じゃあ一時的に別れて、クリスマスが終わったら、また付き合いましょう☆」なんて都合のいいセリフを吐くとでも思ってたの? 成層圏までぶっ飛ぶ勢いのバカね。

 追いすがる彼を無視して、私はさっさとタクシーに乗り込んだ。これでクリスマスの予定は白紙。なのに唇が思わず綻んじゃう。
 今日のブログのタイトルは決まりね。‘君の事を嫌いになりたいので、この場で脱糞してはくれまいか?’。‘まいか’なんて古めかしい表現をする所がミソよ。これはいいネタが出来たわ。
 彼には言ってなかったけど、私ちょっとは名の知れたブロガーなのよ。彼が羨ましがってたこの時計もアフィで買ったし。
 どうせ大した付き合いでも無かったし、この際盛大にネタにさせてもらいましょ。

 あ~、来月はいくらアフィの入金が入るかしら。今から楽しみだわ。