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あの夏のキティ

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2年前の夏、僕は海辺で、友達と花火をする約束をした。男同士の花火では色気が無いと思い、一人の彼女のいる友達に、ぜひ女友達を呼んでもらうように、お願いした。
 
 その願いは叶い、女の子が二人くることになった。そうして僕を含め、男三人と女の子三人で、花火をすることになった。

 男が花火を調達する事になっていた。当日、僕らは胸躍らせながら、花火の約束の一時間前に集まり、最寄りのコンビニで、花火を選ぶ事にした。

 とりあえず、打上花火や手持花火が、バランスよく梱包されている、バラエティーセットなるものを、2袋程、カゴに入れた。花火慣れしているわけではないが、この量では少し物足りない気がして、後は何を買うか迷っていた。量が少ない感じがするから、あと一人、一つずつ選ぶ事にした。

 友達と何にしようか迷っていたら、だんだん会議のようになってきた。大きな音で、BGMを流すコンビニで、僕らは作戦を練った。話をまとめていくと、皆が楽しく、そして、最終的には、お洒落な雰囲気な花火にするという事だった。まだ交際期間が短い、友達の申し出もあり、コンセプトが決まった。

 「最初、楽しく、最終的には、お洒落な雰囲気で」決まったら、選ぶのは簡単になった。

 僕はシックな花火のイメージの線香花火を取り、カゴにいれた。理由は線香花火の儚さや情緒が、直ぐに終わる夏の一日を綺麗に締めてくれる感じがしたからだ。完璧だよ、友達の一人がいう。

 彼女がくる友達は、大きな打上花火を手に取った。理由は、大きな打上花火が空を駆けて行き、百花繚乱の星が流れて咲いたら、これ以上、美しい事は無いと思う。詩的だな。「間違いない、流石だなあ。」僕は言った。

 そうして、最後の一人が選ぶのを待つ間、僕達はお互いの選んだ花火を絶賛し合い、コンセプト通りの花火ができることを確信した。

 そして、最後の一人が選び終え、僕達が話している所に花火を持ってきた。手にしていたのは、全体的に桃色の花火が多く入っていて、リボンを付けたネコのキャラクターが、書いてあった。ハローキティーである。特殊なメガネがついていて、通してみると、花火の光がキティーに見えるというものだった。

 理由は、女子はね、キティーあれば大丈夫なんだよ。これで楽しい花火になる。とても短絡的な理由だった。

 「大丈夫か。」友達の一人が言った。僕も不安だった。僕達やその彼女達も、もう20代の後半に入っている。そんなキャラクター花火を喜ぶとは、とても思えなかったのだ。「まあ、いいや。もし不評だったら、男達でこっそり消化しよう」僕は言った。

 そして、僕らは車に乗込み、待合わせをしている、海辺の場所へ向かった。車中でも、今からの花火の話しで盛り上がった。その中で、友達も少し気になっているらしく、キティーの花火について問い質していた。「なんで、キティーなんだよ」

 キティーを選んだ友達は、話しだした。

 「実は最近、女の子と花火をしたんだよ。その時に、キティーの花火を持ってきた人がいて、すごく盛上ったんだ。キティー様々だよ。」

 「そうなのかあ。その女の子達、年齢はいくつぐらいだったの。」 

  僕は聞いた。

 「確か、二十歳になったばかりって、言ってたなあ。」

 やっぱり・・・、キャラクター花火で、盛上るのは、その頃迄だろうなと、僕は思った。その話は、置いといてまた別の話や、近況などを話しあって、僕達は目的地に着いた。

 僕達の方が、先に着いたみたいで、まだ女の子の方は来ていなかった。その間、外の空気を吸ったり、花火をやる場所を探したりしていると、20分ぐらいしてだろうか、女の子達が到着した。

 簡単に自己紹介をし、僕達は花火をする事になった。まず最初は手持花火から始めた。花火が燃えだすと、こぞって美麗の言葉を言った。そうして、手持花火をあらかた遊ぶと、打上花火をする事になった。

 トンボやパラシュート花火をする。その後に連発花火を数本、砂浜に立てた。それを一斉に点火して、空に舞って行くのを見て、楽しんだ。打上げの終りに、友達の選んだ大きめの花火を打ち上げた。大いに盛上った。

 さあ、また手持花火に移って、僕が選んだ線香花火をしたら、いい感じで終われ、悪い印象は与えないだろうなと思った。そうして、手持花火を始めた。

 もう一人の友達が頃合いを、見計らったように、キティーの花火を出した。

 「あの、これも残っているからやろう。キティーちゃんの花火だけど。」 

 僕らが否定したからか、申し訳なさそうな声で言った。それを聞いて女の子が声をだした。

 「うそ、キティーちゃんの花火。」 僕らの予想とは、裏腹に女の子は興奮した声を出していた。

 それを聞いた友達は、安心して花火に付いてる、メガネの説明をした。

 「付いているメガネを通して見ると、花火がキティーちゃんにみえるんだ。」

 先程の不安混じりの声は一掃され、得意になって話している。
 
 そうして、友達がメガネを渡して、花火を見ると、より一層興奮している様子だった。皆でメガネを廻して興奮の声を上げている。

 少し拍子抜けして、乗り遅れた感がしたが、僕も皆の歩調に合わせようと、メガネを借りて花火を見てみた。確かに花火はキティーの形をしていた。それはそれで面白い商品だなとは思ったが、これ程の盛上ることなのかと思った。単なるネコのキャラクターで、それ以下でもそれ以上でもないと思った。

 それでも僕は当然、場の雰囲気を壊すまいと楽しそうに笑った。笑いながら雰囲気が何かに似てると思った。女の子はとても楽しそうに興奮している。

 そうして、花火も無くなり、そのメガネを一人の女の子が持って帰る事になった。もちろんこのメガネは花火にだけ効果を出すといったものではなく、メガネを通して、灯りをみたらキティーに見えるのだ。その子は、並んでいる電灯を見ていた。感嘆の声を上げた。

 「電灯を見たら、大きなキティーちゃんが見える。」

 その声を契機に、また皆でメガネを廻しだした。皆、さらに興奮している。そして、僕にメガネが廻ってきた。確かにまた花火の光とは、違う見え方がして面白いな、外灯のオレンジの光だから、柔らかく見えるんだなと思った。と思いながら月を見ると満月で大きなキティーが見えた。それを眺めていると、不意に似ている事が分かったのだ。

 先程からの雰囲気は、僕達がヒーローの話をしている時に、類似しているのだ。より細かく言えば、僕達のヒーロー漫画、北斗の拳の話をしている時と一緒だ。その話になると、なぜか心が熱くなり興奮気味になるのだ。

 よくストーリーで星空を見上げる。見上げていると星空の中に、良くも悪くも想っているキャラクターの顔が出てくるのだ。月を見ていたから閃いたのか。

 そうなんだ。きっとキティーは、女の子にとっての、ヒーローなんだ。幾ら年を重ねようが、そのキャラクターの事になると、すぐに盛上れる。そう考えるとキティーが偉大なヒーローのように思えてきた。もし僕も、羅王メガネなるものがあって、月を見て、羅王が映ったら、興奮しまくるだろう。
作品名:あの夏のキティ 作家名:トレジャー