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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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便り

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【 便り 】

 子供を塾に送り届けて戻って来ると、郵便受けに「喪中につき年末年始のご挨拶をご遠慮させて頂きます」というハガキが届いていた。
 幼稚園から中学まで一緒だった香織からのものだ。


 子供の頃から最新のファッションをチェックし、流行に乗り遅れまいと背伸びしていた私に対し、香織はいつも目立たない服装をしていた。
 生活も禁欲的で、例えば中学の頃はカラオケが流行し、クラスみんなで出かけたが、彼女はそんな場所に行く事も禁じられていたようだ。

 別に貧しかったわけではない。両親は離婚し母方の実家に暮らしていたが、家は裕福だったとか。
 彼女の話によれば祖父が異常に厳格な人で、彼女のどこか古風な性格はそのせいと思われた。
 そんな彼女だが、派手好きの私とは不思議と気があって、学校にいる時はいつも一緒にいたものだ。

 その後、高校から別の道を歩んだが年賀状だけは絶やさず近況を報告し合っていた。
 私は短大を出て就職し、社内結婚をして子供が生まれたこと。その子が中学へ入学する年になって受験戦争の悩まされている事などを書いてきたが、香織はずっと家を出なかったようで毎年の年賀状に書かれていた近況もペットや園芸の話が中心だった


「今年は香織に年賀状は出せないのか・・・」
 そう呟きながらハガキをよく読むと、亡くなった祖父についての記述と共に、住所と名字が変わる事が書かれていた。

「そうか彼女もついに結婚するんだ」
 私はそれが我が事のように嬉しかった。
 同い年だから41歳。少し婚期は遅れたようだが、人生まだまだこれからだ!

 そう思って久しぶりに電話をかけたのだが、帰って来た答えは・・・。

「ううん、違うの。お母さんが再婚するから私の名字も変わるのよ。だって私、扶養家族だから」
 と、いうものだった。
 
「扶養家族って・・・香織、あんた いいかげんに親離れしなさいね!」

 ついつい電話口で叱りつけてしまった。
 
      ( おしまい )
作品名:便り 作家名:おやまのポンポコリン