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えりまきとかげ
えりまきとかげ
novelistID. 42963
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あるウィルス

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僕にあのウィルスが見つかったんだ。

隣にいる彼は少し悔しそうに、目を伏せて呟いた。

それは……御愁傷様です。

正直、私からすれば他人事だった。
私があのウィルスに感染することは0.1%あるかないかの確率だからだ。
環境的な面での話だ。

これからどうなるんだろう……

彼は普段から青い顔を更に真っ青にした。

先も不安だろう。なんてったってそのウィルスはとんでもない繁殖力を持っている。
ちょっと目を離した隙に、すぐに増えてしまう。
そして体の表面の隅から隅まで蝕む。

主にそのウィルスは、感染者の内側よりも外側の破壊を積極的に行う。
初期はあまり害はないのだが、何度も増殖と減少を繰り返して、少しずつ力を付けていく。
そして様々な種類の有毒な物質を作り出す。それがかなり厄介な訳だ。
それが極々稀に周りにも飛んでくるそうだ。
先も言ったように、私は大丈夫だが。

ここまで進行すると、そこからは感染者は長期に渡ってじわじわと苦しめられる期間に入る。


そのウィルスに一度感染してしまうと、治す方法は一つしかない。
それは、感染者に強い衝撃を与えるという方法である。しかしこれは失敗すると感染者が死んでしまう可能性があるため、かなりのリスクを伴う。しかもこの方法で確実にウィルスを全滅させられるというわけでもない。そのウィルスは知能も高いらしいので、半分は生き残ってしまうようだ。
そのため、この処置には成功例はまだない。

ただ、放っておいても感染者が死ぬ訳でもない。無理に処置を行って死ぬよりは、苦しみに耐えながら過ごす事が多いらしい。


青い顔をした彼は、ついさっき処置を施したようだ。
失敗こそしたものの、どうにか死ぬことはなかったみたいだ。

もう二度とあんな事はしないよ。

死に瀕したというのに彼はピンピンしている。
二度目の”死ぬ程痛い”よりも”死ぬまで苦しい”方がましだと考えたらしい。


あなたもこのウィルスにはお気を付けて。
あなたが感染するかどうかは私にはわからないが。

そういえば、ウィルスの名前を紹介し忘れていたね。このウィルスの名前は……












「ニンゲン」
作品名:あるウィルス 作家名:えりまきとかげ