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オムライス

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由美さんは35歳 シングルマザー
和君は7歳 小学校1年生 由美さんの子

和君のママの仕事はライフプランナー

仕事の帰り時間は不規則で和君は学童に行っているけれど
ひとりでお家で待つこともしばしばあった
だけど和君は寂しいなんて決して言わない子
いつもママが頑張っている姿を見ているから

そして和君はいつも頑張っているそのママが大好き
お手伝いも一生懸命してママを応援していた


和君はママが会議で遅くなる水曜日は 
いつも公園でクロを待っていた
決まった時間にお姉ちゃんが散歩で連れてくる犬のクロ
和君とクロは大の仲良し 


クリスマスも近いある日の事

いつもの水曜日


和君は大の仲良しのクロを待っていた

だけど和君はいつもの元気がなかった


『和君 どうしたの?今日は元気ないね』と

お姉ちゃんが声をかけた

『そんなことないよ....』

和君はそう笑うけど...でもやっぱりいつもと違う

クロが心配そうに首をかしげて和君を見た

『和君...どうしたの 僕に話して…お姉ちゃんじゃなくて 僕にだよ...』
お姉ちゃんが腹話術みたいにクロになって言った

『…もうすぐクリスマスだよね』

和君はぼそぼそと話した

『そうだね 来週だね』
『僕...ママにプレゼントがしたいの
 僕にはサンタさんが来てプレゼントをくれるけど
 ママには誰もプレゼントをくれないって
 だから僕がママのサンタさんになってあげたいんだ』

『そっか で ママには何をプレゼントをするの?』
『あのね......』


『和君...お姉ちゃんが一緒に協力してあげる ママにそれをプレゼントしよう』
『僕に出来るかな?』
『まかっしといて練習すればきっと和君にも出来るよさっそく明日から始めようか?』
『どこで?』

『僕の家でだよ…』

お姉ちゃんがまたクロになった



クリスマスの日



和君はアンパンマンのエプロンをしてお姉ちゃん家の台所にいた 
慣れない手つきで包丁を握りピーマンを切っている
次に卵を割って…一生懸命 お姉ちゃんの言うとおりに動いている


『和君 おばさん ママが 帰って来てるか見てくるね』


お姉ちゃんのお母さんがそう言ったけど和君には聞こえなかった

だって今日はクリスマス本番で
今まで何度も失敗ばかりしていたから和君は真剣そのものだ
たくさんの怪我もした 
両手に指の所々にばんそうこが貼られていた

大の仲良しのクロも今日はおとなしく和君を見守っている


公園ではお姉ちゃんのお母さんが和君のママに会っていた


『和君のお母さんですか?』
『あ…はい?』
『驚かせて ごめんなさいね...実は 』

ベンチに座ってお姉ちゃんのお母さんと和君のママは話をしていた

『今日一緒にクリスマスパーティーをしようって
 うちの娘と約束したみたいで 急にごめんなさいね』

『いえ こちらこそ いつも家でクロちゃんの話ばかりで
 ひとりで寂しい思いをさせて ひどい母親ですよね』

『和君 そんなことはひとつも思っていないわよ 
 ママは頑張り屋さん 僕の自慢のママだって』

『ほんとですか?』

『和君 本当にママが大好きなのね』

『.....』


和君のママの瞳から小さな星が零れた



台所では和君が一生懸命に奮闘していた
最後の仕上げに赤いウインナーのタコをのせて
『ママへ』とケチャップで大きく卵に字を書いた

『できたぁ~』

『やったね』

和君とお姉ちゃんはハイタッチをして喜んだ

『さてと 和君 サンタさんに変身しないと』

『うん』

『もしもし...お母さん 出来たよ もう良いよ』

お姉ちゃんは最新の携帯電話で公園にいるお母さんに連絡をした

『じゃ 行きましょうか』

『何かあるんですか?』

『そうね....行ってからのお楽しみって事で』

お姉ちゃんのお母さんはにっこり笑った
和君のママはきょとんとしている

今日のプレゼントの事は絶対に秘密
お姉ちゃんのお母さんはその約束をちゃんと守ってくれたみたいだ


部屋の中はほんのり優しいツリーの灯りに包まれていた
赤や緑やピンクに点滅してそれはきれいだった

その部屋のテーブルに和君のママは座った
なんにが起きるのか 不思議そうにしている

『和君のママ 眼を閉じてください』

言われるままに瞳を閉じる和君のママ

和君サンタがママへのプレゼントを落とさない様に
ゆっくり静かに運んできた

『はい いいですよ』

お姉ちゃんのお母さんの声に和君のママは静かに瞳を開いた

『ママ...僕は今日サンタさんだよ はい プレゼント メリークリスマス』
『和...サンタさん ありがとう』
『和サンタが作りました 温かいうちに召し上がれ』
『いただきます』


和君が一生懸命に作った温かいオムライスを和君のママは口に頬張った

『おいしい?』
『うん....とっても…』

和君のママは言葉に詰まったけれど素敵な笑顔で微笑んだ

『サンタさん ママの大好きなオムライス ありがとう とってもおいしい』

和君のママは傷だらけの和君の両手を見つめて握りしめた


『さあ これからクリスマスパーティーだよ
 サンタさんもオムライス召し上がれ』

お姉ちゃんのお母さんがそう言った

大の仲良しのクロも『ワン』と答えた


星が瞬く夜空に鈴の音と共に赤く輝く星が流れた

その夜 和君のベッドにつるされた赤い靴下の中には
サンタさんからのお手紙と欲しがっていた自転車のカギが入っていた

『和君へ
  これからもお母さんを助けてあげるんだよ
         クロも君の大切な友達 仲よくね
                       サンタ』




『ねえ 和君のママに何の手紙を渡したの?』
『秘密』
『ねえ 何の手紙~?』
『おしえない…』
『ケチ!!』
『お母さん はい プレゼント メリークリスマス』
『お...手袋 手編みじゃない 嬉し~』
『やだ~お母さん 抱きつかないで~』
『だって 嬉しいんだもん』

『ワン!!!ワン!!!』

                END...



    あなたにも素敵なクリスマスが訪れます様に~☆
 

作品名:オムライス 作家名:蒼井月