意味不明な徹夜
意味不明な徹夜
ヤマハのモトクロスチームに所属するバイクライダーの友人Kが、
バカでかい四輪駆動車で私を迎えに来たのは、土曜日の午後十一時頃だった。
高速湾岸線で西葛西へ連れて行かれた。
平日の友人はクラブホステスを六本木から
時速150キロで各マンションへ送り届ける仕事もしていた。
一般道路で150キロというのはジェットコースターに乗っているような
もので生きた心地がしない。
友人は、木更津から築地まで11トン車で魚を運ぶ仕事もしていた。
そして午前中は、東京都の清掃局の車のドライバーでもあった。
見た目が動物的な彼は、常にエネルギッシュで普通じゃない男だった。
西葛西の24時間営業の喫茶店に着くと、
そこで待っていたのは京都の老舗旅館の美しいお嬢様だった。
そういう説明がなくてもそんな雰囲気の若い女性だった。
間もなく既婚者の従兄弟のM氏が顔を見せた。そのお嬢様の従兄弟である。
午前二時、その遠距離不倫の男女が店からふたりで出て行った。
私は友人と朝までそのふたりが戻って来るのを待った。
当時は全盛時代だったインベーダーゲームをしながらである。
ふたりが行った先は恐らくラブホテルだったのだろう。
日曜日の朝、四人でその家へ行った。M氏の家である。
不倫をされながらそれを知らない妻は、しかし、かなりの美人だった。
夫の不倫相手のお嬢様と顔見知りで、親しく話していた。
その女性はバイクライダーの私の友人Kと不倫をしていた。
そのとき、私がどのような役割を果たしたのだろうか。
Kの手持ち無沙汰を、苛立ちを、幾らか軽減するために駆り出されたのだろうか。
了