主張の昇華
少女は声高に叫んだ。
「わたし、見たわ。お空を飛んでたの。UFOよ」
「うそつきだ、うそつきだ! そんなのあるわけないって、テレビでやってたし、おとうさんも言ってた!」
少女の主張を、少年は聴かなかった。心を傾けなかった。
「うそじゃないもん。見たんだもん!」
「じゃあじゃんけんで決めようぜ!」
おかしな話になってしまった。真実を、客観的な意見でも、富でも権力でも信憑性でもなく、じゃんけんで決めようということになってしまった。なんとも子供らしい。……そうだろうか?
「さいしょはぐー、じゃんけんぽい!」
「やった、やったあ!」
勝ったのは少女だった。よって少なくとも彼らの間では、しかし彼らにとっての世界の全てでは、UFOが存在することになった。
めでたしめでたし。