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一緒にゲーム作りませんか?

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エピローグ


 オレは元の生活に戻った。
 週明けに香奈とつかさちゃんを呼び出して週末起こった事を話した。
 仁さんの事に付いて初めは良い顔はしなかったが『根は悪い人間じゃ無い』と説得すると一応納得してくれた。
 そして来栖さんがゲーム作りに参加したいと話しの方は2人は反対はしなかった。
 しかし香奈は何やら複雑な感じに目を泳がせ、つかさちゃんに至っては3日ほど口を聞いてくれなかった。何を聞いても『知りません』の一点張りだった。何か悪い事したかな?
 
 さらに数日後にはオレの家に仁さんの父親の央真専務がやって来た。
 央真専務は仁さんが迷惑をかけてきた人々に謝罪を入れて走り回っているらしく、仕事に感けすぎて息子の事を見てやれなかった事に凄く後悔していた。
 その仁さんの方はと言うと、大学を辞めてアメリカに行くと決めたらしい、プライドが高かったみたいだし自分の敗北が許せなかったんだろう、
 オレは専務に来栖さんと車の中で話しあった事を話し、いつか帰って来た時には友達として受け入れると約束した。
 
 それから少し時間が流れて9月の後半の週末、オレの家のリビングでは香奈、来栖さん、つかさちゃんが集まった。
 実は昨日の金曜日、学校で来栖さんがオレ達に渡したい物があると言って来た。その時は教えてはくれなかったが来栖さんが神谷さんと供にそれを家に持って来てくれた。
「じゃーん」
 来栖さんがダンボールの中から取り出したそれはノートパソコンだった。
「中古で悪いんだけど……」
 このノートパソコンは昭夫さんが昔使ってた物らしいのだが古くなっていらなくなり、メモリーを消去してリカバリーをかけてオレに譲ってくれると言うのだった。
 何はともあれパソコンがあると言うのはありがたい、一々ノートに書くよりも早くシナリオが作れるし、失敗してもまたやり直せる、
 しかしいくらノートパソコンで持ち運びは出来るとは言え回線を開けなければ何の意味も無いが、その配線も全部揃っていた。後でつかさちゃんに接続を教えてもらおう、
「お祖父様が言ってたわ。もし本気でゲームを作る気があるなら道具も良い物を揃えるべきだって…… まだまだ未熟だけど磨けば光る可能性があるって」
 あの昭夫さんが……
 オレ達の作るゲームはまだまだだと言ってくれたがそれなりに評価してくれたって事か、
「それじゃあ早速ゲーム作ろうぜ、さっそくこのパソコンにシナリオを書き込んで……」
「ごめんくださーい」
 ベルが鳴ったので出て見るとそれは宅配便だった。
 届いたのはかなり大きなダンボールで、伝票には卓の名が書かれていた。
「1980円です」
 しかも代金オレ持ちかよ?
 ざっと見積もって30キロはあるだろう、仕方が無いから金払って荷物を受け取ってオレの部屋に持って行こうとしたけど重くて持ち上げる事が出来ず、廊下を引き摺って行った。
「くっそ、一体何入れやがったんだ。あの野郎」
 鉄球でも入ってんじゃないかと思った。いずれにしろ玄関に置く訳には行かないのでリビングの方に持って行った。
「どうしたのそれ?」
「卓からだよ」
 オレは忌々しそうに言う、
 マジでリビングに持って来るまで大変だった。もしつまらない物なら、この間預かったあいつの赤点の小テストを親に見せてやろうと思ったその時、
「ん、卓?」
 卓専用に指定してあった卒業式に伝説の木の下で女の子に告白されるギャルゲーのオープニングの着メロが流れた。
 本当はギャルゲーは入れるつもりは無かったんだが、あいつがこれにしろってうるさかったからだ。
『おう、オレだ。荷物届いたか?』
「卓、丁度良かった!」
 こっちから連絡しようと思ったけど手間が省けた。
 オレはクレームをつけてやろうかと思ったが奴の方が先に言って来た。
『悪いな、本当はもっと早く送ろうと思ったんだけど…… どれにしようか迷っててさ』
「お前どう言うつもりだ? 一体何送ってきやがった?」
『えっ? 忘れたのか? 約束しただろ』
「約束?」
 そんな事したっけな?
 オレはとりあえずダンボールを開いてみる、中を見た瞬間オレは心臓が止まるかと思った。何と18禁の同人誌がこれでもかと思うほどぎっしり詰まっていたからだ。
「なあっ?」
 思わず声を上げて、慌てて蓋を閉じるがすでに遅かった。
 香奈達にも見られて3人は石化魔法でもかけられたかのように硬直していた。
「おい卓! 誰がこんなモン送れって言った?」
『前に言っただろ、送ってやるって…… 俺の所のサークルだけじゃ物足りないだろうと思って俺の秘蔵のコレクションも入れてやったんだ。ありがとく読んで置けよ! じゃあなブラザーっ!』
「ま、待て、誰がブラザーだ! おいっ?」
 オレの叫びも虚しく卓は通話を切りやがった。
 しかしそんな事は問題じゃなかった。俺の背後から恐怖なんて度を越した気配を感じた。
「い、さ、み〜〜……」
 振り向かずとも分かる、オレに待っているのは絶望だった。
 1999年7の月にどうして恐怖の大王が降臨し、アンゴルモアの大王が復活しなかったかその訳が今分かった。きっと恐怖の大王もアンゴルモアの大王もここに居る究極の破壊神を恐れて一緒にバックレたに違いない、
「アンタ、アンタ……」
 香奈は怒りのあまり言葉すら無くした。
 オレは逃げる事すらで出来ずに腰が抜けていた。
「おおお、落ち着け香奈…… は、話せば分かる! これはオレの意思じゃなくて……」
 こ、殺される……
 オレは確信すると必死で誤解を解こうとするが香奈の怒りは静まらない、むしろ逆効果だ。火に油を注ぐどころか火災現場にミサイルをぶち込むような物だ。
「先輩」
「あ、つかさちゃん」
 つかさちゃんはニッコリと笑った。
「私は分かってますよ」
「え、本当?」
 オレは泣きそうになった。
 つかさちゃんは頭がいい、どこぞの暴力女よりずっと理解力がある、香奈を説得できるのはつかさちゃんだけだ。
「多分歯の2〜3本は抜けるでしょうけど、命までは取られはしないでしょうから……」
「えっ? いや、これはね……」
「覚悟してくださいね」
 つかさちゃんがゆっくりと目を開けると奇麗な瞳から光が無くなっていた。
 表情こそ笑っているが目は怒りと殺意に満ちていた。これがヤンデレって奴か? おっかねぇ!
「あ、あの……」
 来栖さんを見る、
 しかし来栖さんは肩を窄ませて恥ずかしそうに目を泳がせると……
「ま、まぁ…… 吉崎君も男の子なんだし、仕方ないとは思うけど…… さすがにそこまでは……」
「違うんだよ、オレは!」
「勇っ!」
 オレの胸倉をつかみ上げた。
 香奈は頭に血が上り過ぎて理性が完全に吹っ飛んでいた。背後からゴゴゴ…… と言う音が聞えて震えて握った拳が光り輝いた。
「死んで来い! このバカたれぇ――ッ!」
「ぎゃああ〜〜〜っ!」
 見事な右ストレート、正直こいつのパンチは何度食らっても慣れなかった。

 これがオレの生活だった。
 暴力的で素直じゃ無いが、困った時に手を貸してくれる幼馴染、
 虐められた過去を持ちながらも心に強い芯を持って立ち直った後輩、
 少々天然だけど奇麗で優しくて誰からも愛される同級生、