嫉妬SS ver.一颯(ごんだっ!)
「はあ?」
「ね?」
渋々と――何でそんな顔をされなきゃいけないのかわからないけど――頷いたアッキーをじっと見つめていると、殴られた。
「痛い……」
「知るかッ、死ね」
わざとらしくお腹を押さえてうずくまる。顔をあげてへらって笑う。いつも通りのやり取りだ。だけど今日は少し、無理して笑ってる自信がある。俺ってガキなんだなー。とは思うけど、それでも話題にせずにはいられなかった。
「付き合ってるのにさあ、アッキー学校で俺と話してくんないよね。佐々木と流留とは喋るのに」
「……え」
不良だとか龍だとか形容されているアッキーには確かに潰せないメンツがあるのだろう。そりゃあわかってるさ、俺だって。でもさ。
「告白してから一週間! 彼女に無視され目の前で他の男と仲良くされ続けてる俺の気持ちが! わかりますか!」
「かっ……! か、彼女とか言うな! 馬鹿!」
――痛い。
「て……いうか……お前そんなこと気にして」
「るよ。俺も佐々木みたいにアッキーに弁当奪われたいし流留みたいに勉強教えてあげたいし、いやそこらへん俺の役割じゃないのは知ってるけどでも、距離できるくらいならさ、告白しなきゃよかったって、思っちゃうじゃん」
アッキーを困らせるためだけに言ってるような笑顔――を作っているつもりだったのに、途中から真顔になっていることに気付いた。うわー、俺ってすっごいイヤな男。サイアクだ。
ちょっと気にかかることがあったってわざとらしく拗ねたように言って、うぜえって殴りかかってくるのをへらへらとかわす。それくらいのことをやってのける自信があった、のになあ。
――ああくそ、かっこ悪い、俺。
息を吸う。こんなかっこ悪いの、イヤだ。
「……え……お前……その、……ごめ」「なんて! びっくりした?」
「はっ?」
珍しくうろたえたアッキーが、一秒後に素っ頓狂な声を上げた。
しばらく目を真ん丸くしたまま固まって、その後、沸いたやかんみたいに怒り出す。
「――ッてめえ! 謀りやがったな!」
「あはは! 言ってることは本当だよ? もっと学校でもいちゃいちゃしたいなあ」
「するかボケ! 死ね! 権田狂! 失せろ!」
アッキーと一緒に死ぬって決めたから、悪いけど先には死ねない。そう手を握って笑ったら強烈な膝蹴りが鳩尾に入った。
これくらいがちょうどいい。彼は茶化すことしか考えてない、そう思われるくらいがちょうどいい。しばらくはまだ、まだこのまま。
作品名:嫉妬SS ver.一颯(ごんだっ!) 作家名:大文藝帝國