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えりまきとかげ
えりまきとかげ
novelistID. 42963
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一輪

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羨ましい。

あの女はいつもクラスの中の陽の当たる、居心地の良い場所にいる。成績は常に学年トップで、容姿も端麗。性格も明るく、運動の面ではバレー部に所属しており、2年生ながらレギュラーを勝ち取って全国の舞台にも立った。女の私が言うのもおかしいかもしれないが、彼女は高嶺の花だった。そんな彼女の周りには、当然の様に人が沢山寄って来ていた。良くも悪くも、だが。その中に、私の憧れの人もいた。


一方の私はどうだろうか。
成績は学年では、いつも彼女に負けて2番。容姿で誉められた事は一度も無いし、スポーツは縄跳びだって下手くそな運動おんち。


あまり自分から輪に入れず、俗に陰キャラと呼ばれる私。
人気者で、クラスの中の”光”の存在である彼女。


…………あの女に勝てる要素が何も無い。


それが堪らなく悔しくて…………

そんな思考を巡らせていると、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。あぁ、ノートをとるのを忘れてしまっていた。



学校という束縛から解放された私はいつもの川原のいつもの場所に腰をおろした。
私の周りにはヨメナがちらほら花を開いている。
それを見た私は、地味な花だなと思う。
でも私みたいだなとも思う。

「貴女もせめてもう少し大きく、綺麗になれたらなって思ってるんでしょ?」

花は答えない。当たり前だ。


私だって……頑張ってるのに……。


「何ぶつぶつ言ってんの?」

「えっ?」

急に声をかけられた私はびっくりして振り返った。
そこには、


憧れの人……ではなく、隣の席の森君が立っていた。
独り言を言っていたのを聞かれたと分かって赤面する私。
恥ずかしくて俯く。


「三宅って、学校の後いつもここにくるの?」

「あ、うん……」

「急に声かけちゃってごめんな」

「うん……も、森君はどうしたの? こんなところで」

「いやさ、三宅を見かけたから何してるのかなと思ってさ。ごめん、邪魔しちゃった?」

「う、ううん、全然邪魔じゃないよ」

「そっか。よいしょっと」

森君が私の隣に座った。
私は更に俯く。
何故か森君はそのまま黙ってしまった。
沈黙に耐えられずに私は口を開いた。

「森君、今日部活はないの?」

「今日は休みになったんだ。先生が『今日は休みだ!』ってさ」

野球部の監督の声まねをしながらおどけて答えた。
それがあまりに似ていたため、思わず吹き出してしまった。

「似てるだろ?」

「うん、似てる!」

「だろ~?」


その後も森君は色んな事を話して私を笑わせてくれた。


「三宅、そうやってさ、笑ってなよ」

「えっ?」

「最近の三宅、なんだか疲れてる感じだったからさ…………」

森君は頭をぽりぽりと掻きながら言った。
最後の言葉が聞き取れなかったけど。
確かに最近、全く笑っていなかった様な気がした。


「それとさ」

「……うん」

「……あの…………やっぱなんでもない!」

「えぇ、なにそれ」

気になるじゃない。

「じゃあまた明日言うから! それと三宅、元気出せよ!」

「あ、ちょ……」

森君はそう言って立ち上がるとさっさと走って、帰っていってしまった。

「なんだったのかな?」

森君に少し呆れながらもまた笑っている自分に気付く。少し元気を貰えた私。

「ねぇ」

どこからか声が聞こえてきた。
私はキョロキョロと声の主を探すけど、どこにも人の姿はない。

「貴女、さっき私の事綺麗じゃないって言ったよね」

やっと声の主がわかった。
さっき私が話しかけたヨメナの花だった。
私はまたまたびっくりした。
花は続ける。

「それって誰かと比べるから綺麗、とか綺麗じゃない、とか決めちゃうんでしょ?」

「でもさ、貴女も私もこの世に一つしかないんだよ。元々他とは違う」

「違う……」

「誰かに負けてるとか勝ってるとかさ、そんなこと気にしてないで今を楽しもうよ」

私は考える。今、私は楽しく過ごせていただろうか。少なくとも森君といた時間は楽しかったなと思う。

「そうだよね……」

もう喋らなくなったヨメナの花に言う。

「私も貴女も一輪の花だもの、ね」

私も立ち上がって歩きだした。
作品名:一輪 作家名:えりまきとかげ