リピーター
やっと逃げ出せたと思ったのにあっという間にあの男に捕らえられた。
私は籠の中の鳥だ。あの男から完全に逃げる事は叶わない。
男は私に
「おかえり」
なんて言ってくる。帰りたくもなかったし、捕まえたのはお前だろと思う。
私はただいまなんて言わずいやみたっぷりに、
「おかえり」
と男の真似をして叫んでやる。
ところがいやみをいやみとも受け取らなかったのか満足そうな顔を浮かべて立ち去った。
それからあの男は今までより私を観察するようになった。逃げ出さないように監視をしているのだ。そしてあいつはいやらしい笑みを浮かべながら、
「お前は可愛いな」
と言ってじろじろと私を眺めてくる。
そんな言葉には騙されないが、じろじろ見られるのはどうも恥ずかしい。なにせ私は裸なのだ。
私は恥ずかしいのを隠すためにまた男の真似をしてやる。
「お前は可愛いな」
すると男はあははと笑いながら離れていった。
私が何を言おうとあいつには強がりにしか聞こえないのだ。
私は絶望する。
もう二度と外の世界で羽根を伸ばす事は出来ないのだろうと。