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檀上 香代子
檀上 香代子
novelistID. 31673
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恨みっこなしよ

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恨みっこなーしよ
                 作 檀上香代子 

        一  場


  喫茶店の中。 昼下がり 窓際のテーブルに正義が座っている。 
  貞子が入ってくる。正義の前にすわる。

貞子  御免、遅れて、待った?

正義  いや。

貞子  そう、よかった。

  ウェートレスが、水を持ってくる。

ウェートレス  いらしゃいませ。ご注文は?

貞子  アメリカン、コーヒーを。

ウェートレス  アメリカン、コーヒーですね。かしこまりました。

  ウェートレス去る

正義  仕事の方は、うまくいってるの。

貞子  マアマア、少しづつだけど。

正義  そう、さくらからの電話だと、お母さんが、大事な話で会い

    たいと言う事だったけど、さくらにことづけできなかった?

貞子  うん、会わないと用が足りないから。(ゆっくり、バッグから

    書類をだす。)実は、これにサインしてもらいたいのだけど。

  正義 書類を受け取り目を通し、貞子のかおをみる。ウェートレ
  スがコーヒーを持ってくる。        

                         暗転

         二  場


  玄関に続くキッチン。夜。貞子ドアを開けて、入ってくる。

貞子  ただいま。お!カレーの良い匂い。

  奥より秀夫でてくる。

秀夫  おかえり。ぼつぼつ、さくらも帰ってくる頃だよ。

貞子  そう、さくらが帰ってきてから、一緒のに食べようか。

秀夫  いいよ。その前に、ちょっといい?

貞子  なあに。はなし?

秀夫  (貞子の前に座りながら)お父さんの事、お母さんの気持、

    三年前に話したときと変わってない?

貞子  三年前? ああ、離婚の事ね。うん、へんかなし、どうして?

秀夫  うん、もう、お母さんの思うとおりにしていいよ。

貞子  どうしたの?お父さんとなにかあった?うまくいかなくなった?

秀夫  それもないとはいえないけど、それだけじゃないよ。僕も大人
    
    になったし、自分に正直にいきたいから。

貞子  そう‐‐‐、貴方が納得して決めたのなら、嬉しいよ。有難う。

秀夫  御免ね、いままで、我慢させて。

貞子  何あやまってるの。子としては、当たり前のことを言っただけ、

    それで親の我慢を承知することを、選んだのはお母さん。だか

    ら、お母さんの責任、誰も恨みっこなしだよ。さくらにも気持

    聞いてみるよ。もう中学生だし。

秀夫  うん、さくらも、わかると思うよ。

   ドアが開いて、元気よくさくらが入ってくる。

さくら ただいま。ねえ、ねえ、お母さん聞いて! 今度の真夏でさ、

    パック役に決定しちゃった。ラッキ!(貞子に抱きつく)

秀夫  よかったじゃない。

貞子  本当?頑張った甲斐あったね。

さくら うん。あれ、カレ?、お兄ちゃんカレーの回数おおくない?

秀夫  文句言うな。イヤならたべなくていいんだぞ。

貞子  お兄ちゃんが、一生懸命作ったんだから、文句言わない。

    感謝して食べよう!

   食事に向かう親子               

                          暗転



          三  場

   居間。食後一時間後。パジャマに着替えた貞子とさくら。

さくら ああ、少し疲れたなあ。

貞子  ねえ、さくら、ちょっといい?話したいことあるんだけど。

さくら いいよ。なあに。

貞子  お父さんの事だけど、お兄ちゃんが、お母さんの思うとお

    りにしていいよって、言ってくれたんだけど。

さくら ああ、むかし聞いた。お父さんと別れたいと言う話。

貞子  そう、あのときお兄ちゃんが、頭でわかっても、気持の上

    で整理できない、生活が変わらないなら、親ががまんして

    ほしいって泣いた事、話したよね。

さくら うん、生活が変わらないんだから、いいんじゃない? 

    離婚しても。

貞子  あら、えらく、あっさりじゃない。

さくら だって、お父さんがいても、お金が入って生活が楽になる

    わけでもないし、離婚したほうが、お母さんの精神面でも

    楽になると思うから、私は賛成だよ。

貞子  そう、よかった。そうするよ。

さくら するなら早いほうがいいよ。お兄ちゃんの気が変わらない

    うちに。

貞子  お父さんに、いつ会えるか、連絡して。

さくら わかった。あ、それから二人ともお母さんと一緒だよ。

貞子  勿論よ。お父さんも反対しないと思うけど。

さくら 今までのこと考えたら、できっこないでしょ。恨みっこ無し

    でいいんだ。

貞子  ちょっと、つれなくない?

さくら 本心だもの。おやすみ。

貞子  おやすみ。

                         暗転



         四  場


   元の喫茶店。ゆっくりコーヒーを飲む貞子。正義、書類をテー
   ブルに置き

正義  大学生の秀夫はいいが、中学生だろう、さくらは?

貞子  そう。

正義  で、二人はどうって?

貞子  私に任すって。

正義  僕のほうがわるいのかな。

貞子  どっちがじゃなくて、二人の間で相手に興味もなく、話すこ

    ともなくなっている。その中で生活するのが自分が壊れてし

    まいそうで、しんどい。私の気持を気付いてみていたと思う、

    子供たちは。結婚した時から別居だし、子供たちと会えるの

    もかわらない、いままで通り。慰謝料も養育費もいいの。

    もっと私らしくいきたいから、サインして欲しい。

正義  君に全部背負わせていたから、何もいえないよ。

貞子  あの子達舞台の道に進みたいって、がんばっている。秀夫が、

    親子揃って、青春しましょって、笑って応援してくれてるの。

正義  そうか。‐-‐‐、二人とも、さ、ん、せ、い、してるのか。

    (ゆっくりさいんする)

貞子  ありがとう。二人の籍、私のほうにいれていい?

正義  ああ。それが一番かも。

貞子  貴方も恨みっこ無しで、自由に夢にいきて。あの子達舞台へ

    進むつもりということは、私の生活を知ってて選んだことだ

    から、少しは私を認めてくれてるのかなと、ちょっと嬉しく

    思ったりして。(微笑み)

正義  大学の理工に進んで、舞台の仕事かー‐‐‐まあ、僕達の子

    だから仕方ないか。(笑み)

貞子  (笑う)じゃあ行くね。コーヒーご馳走様。恨みっこ無しで

    がんばるわ。

正義  ああ、僕はタバコを一本吸ってから行くよ。

   貞子喫茶店を出て行く。正義ゆっくりタバコに火をつけ貞子を
   見送る。                           

                           幕


作品名:恨みっこなしよ 作家名:檀上 香代子