がらくた仕掛けの海岸線
月下放浪
あなたは決して夜空を見上げない人でした。爛れて揺れる鬼百合のようだと、私は常々思ったものです。今にして思えば、あなたは夜空に憧れを持つよりも、夜空の下、悲しげに咲いている花を踏みつけぬよう歩いていたのでしょうか。
半分になった月の下、私はもうあなたの名前を忘れ、声を忘れかけています。歩き疲れ痛む足は、それでもまだどこか遠いところに置き去られた意味を探すようで、私はただ月光への愛惜を頼りに、ひとつ、ふたつと、可憐な花を踏みつけ歩くのです。
作品名:がらくた仕掛けの海岸線 作家名:リーヤ